心肥大を指摘された場合に当院で行う検査 ~心拡大との違い~
こんにちは!
蒸し暑い日々が続いていますね。
当院でも、屋外での肉体労働や部活などによる熱中症で点滴を要する患者さんが毎日多くいらっしゃいます。
一度熱中症になると、いくらご自身で水分・塩分をとっても回復しきれないことが実臨床では多いですので、早めに遠慮なくご相談下さい!
では、今回は、健診の心電図で度々指摘されることの多い”心肥大”について、説明したいと思います。
心肥大とは?心拡大との違いは?
“心肥大”とは、その名の通り、心臓の”筋肉”が、肥大=分厚くなることを言います。
よく、“心拡大”と混同されやすいのですが、“心拡大”は心臓そのものが大きくなることを言います。
そして、“心肥大”は心電図所見に現れ、“心拡大”はレントゲン所見に現れます。
“心肥大”をきたす疾患と、“心拡大”をきたす疾患は、同一とは限りませんので、混同せずにしっかり精査を勧める必要性があります。
心肥大の原因は?
心電図で”心肥大”を指摘あるいは認めた場合、その原因は何かを考える必要があります。
二次性心筋症
“心肥大”の原因として最も多いのは、心臓以外の原因疾患によって二次的に引き起こされる心筋症=二次性心筋症です。
具体的には、下記のような疾患が挙げられます。
・ 長年の高血圧により心臓が肥大する「高血圧性心疾患」
・ 心臓の入り口にある大動脈弁という弁が硬くなって十分開きにくくなる「大動脈弁狭窄症」
・ 心臓の筋肉にアミロイドという異常なタンパク質が蓄積する「心アミロイドーシス」
・ 心臓だけでなく肺や眼・神経などにも肉芽腫が発生することの多い「心サルコイドーシス」
・ その他に稀な疾患として、Fabry病・ミトコンドリア心筋症・心筋炎など
“心肥大”の所見を見たら、まずはこれらの可能性がないかを評価することが先決となります。
また、高血圧症の患者さんで、”心肥大”所見を見た際に、”高血圧が原因”と決めつけない姿勢も実臨床では大切です。
特発性心筋症
二次性心筋症が否定的な場合に、特発性心筋症の一つとして、「肥大型心筋症」の可能性を考えます。
特に日本人では、「心尖部肥大型心筋症」という心臓の先端が限局的に分厚くなるパターンが多く、心エコー時に心臓の先端までしっかり観察する姿勢がないと見落としてしまいます。
心肥大を指摘された場合に当院で行う検査
“心肥大”を指摘された場合には、上記疾患の鑑別の為、まずは心エコーによる評価が必須となります。
鑑別の為に心エコーで評価するポイントは、
肥大の有無
本当に肥大しているか。肥大していれば、どの部位が肥大しているかで、おおよその鑑別がつきます。
拡張障害の有無(心臓が膨らむ機能が落ちていないか)
心臓が肥大すると、拡張障害が生まれることが多いので、その有無を評価します。
さらに進行すると、収縮能(縮む力)も低下してきます。
閉塞性の有無
肥大の程度が強い場合、肥大部位で内腔(心臓の中)が閉塞しかかっている場合があります。
したがって、閉塞性が疑われる場合は、その部位の圧を測定します(太いホースよりも細いホースの方が、水圧が上がるイメージです)。
弁膜症の有無
前述の通り、大動脈弁狭窄症は、心肥大をきたします。
逆に、肥大型心筋症や高血圧性心疾患は、僧帽弁閉鎖不全症を引き起こしやすい為、必ず弁膜症の評価は必須です。
この他にも多くのポイントをみて、”心肥大”の原因を突き止めていきます。
さらに場合によっては、採血で各疾患のマーカーを測定したり、心臓MRIや特殊なアイソトープ検査などによって鑑別を進める場合もあります。
当院では、”心肥大”所見を見た場合に、本当に肥大があるかどうかの評価から始まり、その原因疾患の鑑別・治療まで丁寧に行っております。
“心肥大”を指摘されたことがあるけど放置していたというような患者さんがいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談下さい!