心不全との付き合い方
開院してから1ヶ月半が経ち、少しずつ心不全患者さんの紹介を受ける機会も多くなってきました。
そこで今回は前回に引き続き心不全との付き合い方をテーマに説明していきたいと思います。
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前回の記事で心不全は再増悪を繰り返すうちに徐々に寿命が短くなってしまうことを説明しました。
したがって、再増悪しないようにセルフコントロールをすることで、より健康な寿命を全うできるようになります。そこで、心不全とうまくつきあっていく為のセルフコントロール法について説明したいと思います。
塩分を取りすぎない
塩分をとりすぎると、心臓と腎臓に大きな負担がかかり、次第に体に水がたまり、むくみや息切れなどの心不全症状が出てきます。
したがって、心臓の病気をかかえた患者さんは減塩食に注意を払うことが重要です。
心不全患者さんの塩分摂取量は、6g/日未満です。通常、日本人の塩分摂取量は10g/日程度と言われていますので、目標を達成するには食事内容に十分配慮しなければなりません。
減塩療法のこつについては、【高血圧症】減塩療法のこつで説明しますのでそちらをご参照下さい。
尚、ご高齢で筋肉量が少なく低栄養な患者さん(フレイルと呼びます)は、この限りではなく、減塩食よりもむしろより蛋白とカロリーを摂取する必要がありますので、担当の先生の指導を仰ぎましょう。
水分を取りすぎない
【心不全】心不全ってどんな病気?でも説明した通り、心不全は肺や全身に水がたまる状態のことを言いますので、水分を取りすぎてしまうと心不全が増悪する原因になります。
テレビでは夏場に「ご高齢の方は脱水になりやすいので水分を多く飲んでください」と説明されることが多いと思いますが、心不全の患者さんはその限りではありませんので注意が必要です。
適正な水分量は、患者さんの心臓や腎臓の状態、体格などによっても変わってきますので、担当の先生に聞いてみるのが良いと思います。
経験的にはおおよそですが、小柄な高齢女性の方は1~1.2L/日前後、通常体型の高齢男性の方は1.5L/日前後の水分摂取量が適正であることが多いです。※ 汗をたくさんかいた場合などはこの限りではありません。
感染予防を心がける
心臓の病気をかかえた患者さんは、ばい菌感染してしまうと心臓がたえきれなくなってしまい、心不全が増悪する原因になります。
したがって、特に手洗い・うがいなどで感染予防に努めましょう。
また、可能な限り、インフルエンザワクチン、コロナワクチンを接種するようにしましょう。
また肺炎を引き起こす肺炎球菌ワクチンも65歳以上になれば接種できますので積極的に摂取するようにして下さい。
禁煙・節酒
たばこは百害あって一利なしですので、必ず禁煙するように努めましょう。
お酒はアルコール 20g/日までの適量までなら良いと言われていますが、多量の飲酒は水分バランスが崩れ、心不全が増悪する原因になりますので避けるようにしましょう。
アルコール 20g/日は、具体的には下記に該当しますので参考にして下さい。
- ・ ビール:中びん1本(500ml)
- ・ 日本酒:1合(180ml)
- ・ ワイン:グラス2杯(200ml)
- ・ ウィスキー:ダブル(60ml)
薬は飲み忘れない
心臓の病気をかかえた患者さんは、特に飲み忘れによるリスクが非常に高い薬ばかり内服しているはずですので、飲み忘れがないようにしましょう。
どうしても飲み忘れてしまう場合の対処法として下記のようなものが挙げられますので、担当の先生とも相談してみて下さい。
- ・ 薬を一方化する(朝の分は朝の分で1つの袋にまとめてもらう)
- ・ 朝と夕に内服しているものは、朝のみにまとめてもらう
- ・ ご家族や訪問看護師さんなどに管理してもらう
運動療法
心臓の病気をかかえた患者さんにとって、運動療法は薬物療法と並ぶ有効な治療法の1つになります。
ただし、心臓に負担のかからない範囲、つまり有酸素運動を行うことが大事です。
具体的には、「はぁはぁしない」範囲、「少し汗ばむぐらい」の範囲での散歩を、1日20~30分、週に3回以上することが最終的な目標になります。
また、ご高齢の方は筋力も弱まってしまいますので、脚の屈伸運動などご自宅でもできる筋力トレーニングから少しずつ行うようにすることも重要です。
運動療法は、心臓の機能を高めることもたくさん報告されていますのでぜひ積極的に取り組むようにして下さい。