咽頭痛の原因 ~溶連菌感染症について~
こんにちは!
ゴールデンウィーク明けより発熱外来を受診される患者さんが増え続けておりますが、直近の5~6月は強い咽頭痛を自覚される患者さんのうち溶連菌感染症と診断された方が当院でも少なからずおります。
そこで今回は、咽頭痛の原因の一つとして知られる溶連菌感染症について説明したいと思います。
溶連菌とは?
溶連菌の正確な名前は、”A群β溶連菌”と言います。
潜伏期間は2~5日で、38~39℃以上の突然の発熱と、のどの痛み(咽頭炎や扁桃炎)・リンパ節の腫れを初期症状とすることが多く、風邪のような咳や鼻水は出にくいのが特徴です。
特に咽頭部に白い苔のようなものが付着している場合には溶連菌感染症を強く疑います。
またお子さんの場合には、猩紅熱と呼ばれる体や手足に赤色の発疹が広がったり、舌が苺のように腫れる苺舌を認めることもあります。
通常は11月~4月、6月~8月に流行することが多い感染症です。
感染経路は?
咳やくしゃみによってばい菌が口に入ることで発症する“飛沫感染”と、食事などでばい菌を共有することで発症する“接触感染”があります。
したがって、溶連菌感染症が疑われる あるいは診断された方がご家族にいる場合は、手洗いやうがい・マスク着用など感染予防に努めることが必要です。
感染しやすい年齢は?
学童期のお子さん(3歳~14歳)に最も多く認めますが、大人の方でも発症することもある為、注意が必要です。
当院でも大人の方で陽性になる方が絶えずいらっしゃいます。
検査の方法は?
新型コロナウイルスの抗原検査と同様、10分程度で結果が出る迅速抗原検査があります。
長い綿棒でのどの奥の方を軽くこするだけの検査で負担はほとんどありません。
当院では発熱や強い咽頭痛が主な症状で、咽頭部に白い苔を認める場合には、溶連菌抗原検査を推奨しております。
治療法は?
溶連菌感染症の治療法の王道は抗生剤治療です。
ペニシリン系の抗生剤であるアモキシシリン(サワシリン)やオーグメンチンで治療を行うことが一般的です。
また後に説明する合併症を予防する為にも、症状が消失しても抗生剤は処方された期間しっかり飲み切ることが大切です。
尚、市販の風邪薬は根本治療にはなりませんので必ず医療機関で治療を受けることも大切です。
いつまで学校や会社を休む必要がある?
抗菌薬の内服を開始して24時間以上経過すると感染力はほとんどなくなることが示されておりますので、医療機関を受診した日とその翌日は登校・出勤を自粛していただくことが原則となります。
合併症に注意
溶連菌感染症の合併症として、急性糸球体腎炎やリウマチ熱があります。
特に急性糸球体腎炎は溶連菌感染から1~3週間後に発症し、むくみなどの症状を引き起こしますが、まれに重症化や慢性化する場合もあります。したがって溶連菌感染が確定した場合、当院では2~3週間後に必ず尿検査を実施し、尿蛋白や尿潜血がないかを確認しております。
溶連菌感染症は診断後、適切な抗生剤治療を受ければ感染力を早めに抑え、合併症も予防可能な感染症です。
当院では咽頭痛の訴えのある患者様では、常に溶連菌感染症の可能性も頭に入れながら診療しております。
のどに白い苔のようなものが付いているなど疑わしい症状があれば、遠慮なくご相談下さい。