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医療コラム

弁膜症って何?原因と治療法は?|湘南いいだハートクリニック|平塚市の内科(一般内科・循環器・心臓血管)

弁膜症って何?原因と治療法は?

 こんにちは!

 3連休は休日夜間診療所で当直勤務をしておりましたが、コロナの患者さんがやはり増えておりますので、感染予防に引き続き注意していきましょう。

 では、今回は、当院の発熱外来時や健診の際の聴診で、偶然心雑音が見つかり、心エコー精査をすると治療対象の弁膜症であった方が何人かいらっしゃいました(幾名かは手術となりました)。当院には弁膜症で通院されている患者様も多い為、今回は、弁膜症とは何か?について、その概要を分かりやすさメインで説明したいと思います。

弁膜症がみつかるきっかけ

 そもそも弁膜症はどういったことを契機に見つかるのでしょうか。

 多くは下記の3パターンと考えられます。

① 健診などの診察時に見つかる心雑音

② 労作時(動いた際)の息切れ・胸部圧迫感・動悸、下腿浮腫などの心不全症状の原因精査

③ 通院患者さんの定期採血などでBNP(あるいはNT-proBNP)を測定した際に高値であった場合

 特に③については、最近、高血圧症を含む動脈硬化性疾患由来の拡張障害(HFpEF)が注目を浴びており、

 高血圧症などの生活習慣病をもつ患者さんで、心不全マーカーであるBNP(あるいはNT-proBNP)が高い場合には、早めに精査をすることが推奨されています。

 また、精査が推奨される基準値についても、BNP 値はこれまでの100以上から35以上へ、NT-proBNPは400以上から125以上への引き下げが最近声明されています(「血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント 2023年」より)。

 そして弁膜症の診断には、心エコー精査は必須となりますので、当院では上記にて弁膜症の存在を疑う患者さんでは、心エコー精査を推奨しております。

弁膜症とは?

心臓の弁は4種類

 そこで、弁膜症とは何かについて考えたいと思います。

 まず、心臓の弁は4種類あります。

 心臓の左側に、僧帽弁と大動脈弁。

 心臓の右側に、三尖弁と肺動脈弁があります。

 特に心臓の左側(下のイラスト図の向かって右側)は、全身に血液を直接送る側になる為、左側にある僧帽弁や大動脈弁の異常は、右側にある三尖弁や肺動脈弁の異常よりも臨床的に問題となるケースが実臨床では多い印象です(先天性は除きます)。

弁膜症は、どの弁がどのような異常をきたしているかで大きく分類される

 弁膜症は、下記の2点から大きく分類されます。

① 上記の4つの弁のうち、異常があるのはどの弁か?

②  ①の弁が、どのような異常をきたしているか? 

→狭窄症か?閉鎖不全症か?

 弁は開くことで血液を送り(駆出し)、閉じることで送った血液が逆流しないようにする機能をしています。

 この弁の開きが悪いと十分血液を送ることができなくなり、「狭窄症」と呼ばれます。

 一方、弁が十分閉じないと、送った血液が弁の隙間を通って一部逆流してしまい、「閉鎖不全症(逆流症)」と呼ばれます。

 したがって、例えば、① 大動脈弁の ② 開きが悪い 場合は、大動脈弁狭窄症となります。

 ① 僧帽弁の ② 閉じが不十分な場合は、僧帽弁閉鎖不全症となります。

 そして、弁膜症の種類によって、原因や治療法が異なりますので、まずはご自身が指摘された弁膜症が何であるかを把握することが大事です。

 上のイラスト図の赤色矢印部が、実臨床で多くみる弁膜症となりますので、以降では、これら多くみかける弁膜症についていくつか取り上げて説明したいと思います。

狭窄症の原因と治療法

 実臨床でよく見る狭窄症は、大動脈弁狭窄症と僧帽弁狭窄症です。

 大動脈弁狭窄症の原因のほとんどは、加齢による硬化性変化(弁が硬くなります)ですが、若年で見つかる場合は、先天性二尖弁(本来は3つあるはずの大動脈弁が先天的に2つしかない)が隠れていることもあります。

 一方で、僧帽弁狭窄症は、多くの原因がリウマチ熱ですので、抗生剤の普及により昨今見かける頻度は激減しました。

 いずれの狭窄症も進行すると、労作時の息切れ・胸部圧迫感・動悸、下腿浮腫などを認めるようになり、いずれ手術を要することも少なくない為、慎重なフォローを要します。

 現在、大動脈弁狭窄症に対しては、胸を開かずに治療可能なカテーテル手術(TAVI)も普及していますので、ご高齢の方でも根治が可能な時代となっています。

閉鎖不全症の原因と治療法

 実臨床でよくみる閉鎖不全症は、僧帽弁閉鎖不全症と三尖弁閉鎖不全症です。

 そして、閉鎖不全症は、その原因によって”器質性”と”機能性”の2パターンに分類されます。

※ ただし、三尖弁閉鎖不全症は、その原因のほとんどが”機能性”です。

器質性

 ”器質性”とは、「弁そのものの異常」によって、弁がしっかり閉じ切らなくなることを言います。その原因のほとんどは、弁が逸脱する(左房という心臓の部屋に弁が落ち込む)ことで弁がしっかり閉じ切らない逸脱症です。

 この“器質性(弁そのものの異常)”が原因の場合、労作時の息切れ・胸部圧迫感・動悸、下腿浮腫などを認めやすく、狭窄症同様にいずれ手術を要することも少なくありません。

機能性

 ”機能性”とは、主に「弁以外の原因」で、慢性的に心臓に負担がかかり、左房という心臓の部屋が大きくなったり、弁が左室という心臓の部屋に引っ張られて、弁がしっかり閉じ切らなくなることを言います。

 ここで言う「弁以外の原因」として多いものは、

・ 長年の高血圧等が遷延することで心臓が十分膨らめなくなる拡張障害(HFpEF)と呼ばれる病態

心房細動や心房粗動などの不整脈

・ 狭心症や心筋梗塞を含む心筋症などの心疾患

などが挙げられます。

 この“機能性(原因が弁以外にある)”が原因の場合は、重症でない限り、まずはこういった原因疾患の治療を優先させることが多く、内服(お薬での)治療でもコントロール困難な場合に手術を検討することが実臨床では多い印象です。

 特に、近年は生活習慣病が放置されることで気づいたら心不全を発症している拡張障害(HFpEF)に注目が集まっており、可能な限り早期にこういった徴候を見つけることが非常に重要です。

 

 当院に通院されている患者さんでは、聴診などで可能な限り早期にこういった徴候を見つける努力をしております。

 また弁膜症が見つかった場合には、ガイドラインをベースにしつつ、”患者さんごと”に弁膜症とうまく付き合っていける方法を見出しております。

 もしこれまで心雑音を指摘されて気になっていたとか、BNPが高いと言われたことがあり気になっているという患者様がいらっしゃいましたら、遠慮なくご相談下さい。

※ 当記事は患者さんへの分かりやすさを最大の優先事項としている為、細かな例外事項は一部省略しております。

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