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医療コラム

心臓も腎臓も守ってくれる今注目の糖尿病治療薬=SGLT2阻害薬とは?|湘南いいだハートクリニック|平塚市の一般内科・循環器内科・心臓血管内科

心臓も腎臓も守ってくれる今注目の糖尿病治療薬=SGLT2阻害薬とは?

 こんにちは!

 今回は通院患者さんの背景疾患として増えてきました糖尿病のお薬の中で、特に心臓・腎臓の両者を守る効果も兼ね備えたSGLT2阻害薬についてのお話をしたいと思います。

 尚、当記事を4分30秒程度の動画にまとめてみましたので、もしよろしければ、こちらもご参考にしてみて下さい

※ 無音でご視聴可能な動画となっております。

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 糖尿病のお薬は今や数えきれない程多くありますが、その中でも心臓・腎臓の両者を守る効果も兼ね備えた昨今注目されているお薬として、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬があります。

 特にSGLT2阻害薬は糖尿病のない心不全患者さんにも適応で、現在は心不全患者さんが最優先で内服すべき4つのお薬の1つに選ばれています。心臓の病気をもつ患者さんにとってはARNI(エンレスト)と並ぶ救世主のようなお薬と言っても過言ではありません。

※ 上記 4つのお薬は、”fantastic four”とも呼ばれ、SGLT2阻害薬・ARNI(エンレスト)・β blocker・ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬がそれに相当します。

 

 SGLT2阻害薬には、

フォシーガ(ダパグリフロジン)

ジャディアンス(エンパグリフロジン)

カナグル(カナグリフロジン)

スーグラ(イプラグリフロジン)

ルセフィ(ルセオグリフロジン)

デベルザ(トホグリフロジン)などがあります。

 そこで、このSGLT2阻害薬の特徴を下にまとめてみました。

糖尿病のお薬としての効果

 血液中の過剰な糖を尿から排泄させることで、血糖値を下げる効果を発揮します。

 3ヶ月間の血糖値の指標であるHbA1cを0.6~1.2%低下させることが報告されています。

 尚、必要以上の糖は排泄しませんので、SGLT2阻害薬単独では低血糖になるリスクは非常に低いとされています。

 実際に糖尿病のない心不全患者さんに導入して低血糖になったことは経験したことがありません。

 尚、他の糖尿病のお薬と同様、”シックデイ”と呼ばれる食事できない程体調が悪い時は、”ケトアシドーシス”と呼ばれる合併症が起こるリスクが上がる為、休薬が望まれます。

心臓を守る効果

 SGLT2阻害薬のうち、フォシーガ(ダパグリフロジン)及びジャディアンス(エンパグリフロジン)については、

① 心不全再入院を減らす効果 ② 心血管死亡(心筋梗塞などによる死亡)を減らす効果 がエビデンス(証明された効果)として構築されています。

 さらに心房細動(脳梗塞のリスクとなる不整脈)が発症するリスクを低下させるといった心臓関連の様々な報告が近年あります。

 したがって、糖尿病の有る無しに関わらず、心臓の病気をもつ患者さんではフォシーガあるいはジャディアンスの内服を第一選択として検討する必要があります。

腎臓を守る効果

 SGLT2阻害薬は腎臓を守る効果もあります。

 特に腎臓の機能が低下する速度を減らすことで、上で説明した心臓を守る効果の立役者になっている可能性も指摘されています。

 ただし、“initial dip”と呼ばれ、SGLT2阻害薬の内服開始間もない期間は腎臓の機能が一時的に低下することが知られており、それを理由に即座に中止してしまうのはもったいない為、処方医は長期的視野で継続・中止の可否を慎重に決定する必要があります。

体重減少効果

 SGLT2阻害薬は前述のGLP-1受容体作動薬と並んで、所謂”やせ薬”と称されます。

 具体的にはタンパク質の分解などを亢進させることで、2~3kgの体重減少効果を見込めます。

 したがって、肥満を有する糖尿病患者さんでは第一選択として検討すべきお薬となりますが、逆に筋肉量が少ないご高齢の患者さんではますます”やせ”を助長させてしまう可能性があり適応を慎重に考慮する必要があります。

副作用

 SGLT2阻害薬の副作用として無視できないものに尿路感染症があります。

 登場し始めの頃に懸念されていた程多くはない印象ですが、高齢の女性の方や尿路結石・膀胱炎の既往があるような尿路感染のリスクがある患者さんでは投与は慎重にあるべきだと思います。

 

 上で説明した通り、SGLT2阻害薬は糖尿病のお薬の中でも心臓及び腎臓も長期的に守ってくれる非常に優れたお薬です。ただし、ご高齢の患者さんなどでは適応を慎重に検討する必要もあります。

 当院では特に心臓の病気をもつ患者さんに長期的視野で慎重にかつ積極的に導入しておりますので、何かご不明な点があればいつでもご相談下さい!

コメント

  • 中島 より:

    お忙しいところを失礼いたします。ジャディアンスについて検索していてこちらのサイトに辿り着きました。

    私の89歳の父についてご質問させていただきたいのですが、慢性心不全の父は現在6種類ぐらいの投薬を受けています。たまたま父との会話のなかで、高い薬を処方されてるんだ〜と。ジャディアンスという薬を処方されていることを知りました。

    私は海外に在住しており、年に2度ほど帰省して高齢の両親のサポートをしています。認知症の母の老老介護をしている父には本当に申し訳なく思っています。父は色も細く、私が帰省している間はとにかくたくさん好みの食事を作るようにして体重を増やしてもらうことに専念しています。

    そこで今回のジャディアンスですが糖尿病ではない父が心不全に対応するお薬として処方されているようですが、筋肉量も減少していてフラフラしているし170センチで55キロになって痩せているのにジャディアンス処方は危険ではないかと強く疑問に思ったのです。高齢者が体重を落とすことのリスクをうわまるメリットがこのお薬にはあるとは思えないのです。

    体に入れた少しの栄養が、糖尿薬で流れ出てしまうなんて。高齢者はとにかく体重を落とさないことが第一のはずです。主治医に、他の心不全に特化したお薬の処方をお願いしても良いものか迷っています。どうすれば良いのでしょうか、、

    日々の診療でお忙しい中を大変申し訳ございませんが、ぜひ先生のお考えをお聞かせいただけませんでしょうか。よろしくお願いいたします。

    • 湘南いいだハートクリニック 院長 より:

      初めまして!
      ご質問ありがとうございます。
      ご指摘の通り、一般にSGLT2阻害薬はフレイルが進行したご高齢の心不全患者さんでは、蛋白分解などの異化作用により筋肉量を減少させてしまう可能性もあり、適応については慎重に検討する必要があります。
      ただし、重症の心不全患者さんの場合には、SGLT2阻害薬の心保護作用のメリットが、上記デメリットを上回るケースも皆無ではなく、その適応は”患者さん毎に“慎重に評価しなければなりません。
      ご高齢ですがジャディアンスを継続しているのであれば、それなりの根拠・想いが主治医にあるはずですので、一度聞いてみるのが良いと思います。

      ※ 当コメントは、いただいた情報に対する”一般論”としてご回答しております。治療方針等につきましては、”必ず”近医または主治医の指導を仰いでいただきますようお願い致します。

      • 中島 より:

        院長先生。早々にご返答を賜り深く感謝いたします。
        先生のアドバイスのとおり主治医にジャディアンス処方について、きちんと不安な点について話をするよう父に伝えてみます。

        親のことは遠く離れているので心配が尽きませんが、先生からこのように直接ご親切なアドバイスをいただけてとても嬉しかったです。ありがとうございました。実家は二俣川なので先生のクリニックが遠いのは非常に残念ですが、また質問させていただくこともあるかと思います。その節はどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

        • 湘南いいだハートクリニック 院長 より:

          北海道などからご質問いただくケースもありますので、意外に近場ですね!
          現在は市や県を超えて当院に来院される患者様もいらっしゃいます。
          またご不安なことなどがあればご相談下さい♪

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