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医療コラム

悪玉コレステロールが高いのですが、薬は飲まなくても良いですか?|湘南いいだハートクリニック|平塚市の一般内科・循環器内科・心臓血管内科

悪玉コレステロールが高いのですが、薬は飲まなくても良いですか?

 こんにちは!

 寒い時期が続き、胸痛や動悸・不整脈発作の相談が増えております。

 胸部症状で悩まれている患者様がいらっしゃいましたら遠慮なくご相談下さい!

 では今回は、「悪玉コレステロールの値が高いが、薬は飲まなくても良いですか?」という患者様からよくいただく永遠のテーマについて説明したいと思います。

 尚、当記事を5分程度の動画にまとめてみましたので、もしよろしければ、こちらもご参考にしてみて下さい

※ 無音でご視聴可能な動画となっております。

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 悪玉コレステロール、つまりLDLコレステロールの管理目標値(目指すべき目標値)は、実は患者さん毎に異なります。

 したがって、「悪玉コレステロールの値が~と高いから、薬を飲んだ方が良い」と値だけをみて一概に言うことは難しく、性別・年齢を含めた患者さん個々の背景因子をみて、総合的に治療すべきかすべきでないかを当院では判断しております。

 そしてその為には、患者さん毎(ご自身)の悪玉コレステロールの目標値を知ることから始まります。

 そのための”1つの”指標として、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2022年版」では、絶対リスクの評価法として新規に久山町研究スコアが採用されましたが(従来は吹田スコアでした)、少しややこしいので、可能な限り分かりやすく説明したいと思います。

冠動脈疾患・アテローム血栓性脳梗塞の既往がある患者さんは、目標値100未満(背景によっては70未満)

 冠動脈疾患つまり狭心症や心筋梗塞の既往のある患者さんや、アテローム血栓性脳梗塞(動脈硬化由来の脳梗塞)の既往のある患者さんは、管理目標値が100未満と厳しく設定されています。

 さらに、その中でも、「急性心筋梗塞や不安定狭心症」・「家族性の高コレステロール血症」・「糖尿病」・「冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞の両者の既往」のいずれかがある患者さんでは、さらに厳しく70未満に設定されています。

 リスクの高い患者さんでは再発予防(二次予防)が非常に重要である為、「Lower the better」=低ければ低い程良いという考え方もあります。実際、海外ではさらに低い管理目標値に設定されており、厳格なコントロールが求められています。

 冠動脈疾患やアテローム血栓性脳梗塞の既往がない患者さんでは、次のフローチャートに進みます。

糖尿病・慢性腎臓病・閉塞性動脈硬化症のいずれかがある患者さんは、目標値120未満(背景によっては100未満)

 糖尿病・慢性腎臓病・閉塞性動脈硬化症のいずれかがある患者さんは、管理目標値が120未満となります。

 ただし、糖尿病患者さんのうち、網膜症・腎症・神経障害のいずれかの合併症があったり、喫煙している場合には、さらに厳しく100未満に設定されています。

 糖尿病・慢性腎臓病・閉塞性動脈硬化症のいずれもない患者さんでは、次のフローチャートに進みます。

上記以外の患者さんでは久山町スコアでリスク評価し、目標値120未満か140未満か160未満かに分類される

 久山町スコアは下に示した通りです。

 ①~⑥の合計ポイントを計算し、右の表でどの色に相当するか確認します。

 右の表の「%」は、10年以内に冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞を発症する確率です

A)低リスク(水色)の場合は、管理目標値 160未満

B)中リスク(黄色)の場合は、管理目標値 140未満

C)高リスク(赤色)の場合は、管理目標値 120未満

となります。

 分かりにくいと思いますので、いくつか具体例を挙げてみます。

A)「56歳、男性、血圧 125/75、糖代謝異常なし、LDL-C(悪玉コレステロール)145、HDL-C(善玉コレステロール) 65、喫煙なし」

→このような患者さんの場合、① 7点 ② 1点 ③ 0点 ④ 2点 ⑤0点 ⑥ 0点から、合計10点となります。

 すると、右側の表で10年以内に冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞を発症する確率が3.0%となりました。

 中リスク(黄色)に該当する為、管理目標値は140未満となりますので、食事・運動療法でもう少し頑張れば目標達成できそうです。

 このように、男性は女性より一般にリスクが高い点から、久山町スコアでは男性の方が管理目標値が厳しめとなります。

B)「65歳、女性、血圧 133/80、糖代謝異常なし、LDL-C(悪玉コレステロール)185、HDL-C(善玉コレステロール)65、喫煙なし」

→このような患者さんの場合、①0点 ②2点 ③0点 ④3点 ⑤ 0点 ⑥ 0点から、合計 5点となります。

 すると、右側の表で10年以内に冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞を発症する確率が3.4%となりました。

 中リスク(黄色)に該当する為、管理目標値は140未満となりますので、目標達成するには食事・運動療法をかなり頑張る必要がありそうです。その後の経過によっては薬による治療も必要になる場合もあるかもしれません。

 このように、悪玉コレステロールの管理目標値は、患者さん毎に異なります。

 したがって、悪玉コレステロールの治療薬を飲むべきかどうかというよくいただくご質問も、悪玉コレステロールの値だけでは一概に判断できず、患者さん個々の背景をみて判断しております。

 悪玉コレステロールが高いと以前から指摘されているが薬を飲むべきか悩んでいるというような患者様がいらっしゃいましたら、一度ご相談いただけますと幸いです!

※ 上で説明した久山町研究スコアはあくまで一つの指標であり、実臨床では、その他の様々な指標や、”それまで食事療法・運動療法をどの程度されてきたか”, “どの程度高い状態が続いているか”など、その他の因子も総合的に加味して診療を行っております。

コメント

  • さとう より:

    47歳 男
    血圧が上が107下が54
    血糖値が78 ヘモグロビンHA1cが5.5
    LDLコレステロールが 149
    HDLコレステロールが 98
    でしたが病院で薬勧められたのですが
    運動と食事療法で様子見たいと
    薬を断ったたのですが スコア的にどうなのでしょうか教えてください

    • 湘南いいだハートクリニック 院長 より:

      初めまして!
      ご質問ありがとうございます。
      “久山町スコアで見る”と、① 男性で7点 ④ LDL-Cho値で2点 ですので、合わせて9点になります(喫煙なしと仮定した場合)。
      年齢から表に照らし合わせると、リスクは1.3%となり、低リスクに該当します。
      “久山町スコア”での一次予防の為の管理目標値は160未満になりますので、これだけで考えれば、食事療法・運動療法での経過フォローという選択肢は十分あって良いと思います。

      ただし実際は、その他のリスク疾患が背景にないか、頸動脈にプラークがないか、家族性ではないか、これまでのLDLコレステロールの推移など、患者さんをトータルでみてリスク評価し治療適応を考えます。
      久山町スコアはあくまで一つのリスク評価指標ですので、担当医が内服加療を勧めたのであれば、勧めた根拠があるはずですので、一度聞いてみても良いかもしれません。

  • 安部和子 より:

    かずこ
    始めまして宜しくお願いします。
    町の健診結果が今日、出ました。
    血圧119/70
    血糖98 A1c6.1
    中性脂肪107 HDLコレステロール102
    LDL167
    LDLが年々、高くなっています。
    薬が必要でしょうか?

    • 湘南いいだハートクリニック 院長 より:

      初めまして!
      ご質問ありがとうございます。 
      いただいた情報のみで判断するのは難しいですが、仮に60歳代の方であれば、”久山町スコアでは”、中リスク以上に分類され、管理目標値は140未満となります。
      ただし、実臨床では、これまでのLDLコレステロールの推移、家族性ではないか、頸動脈にプラークがないか、その他のリスク疾患が背景にないかなど、患者さんをトータルでみてリスク評価し、さらにその他のリスク指標も鑑みて、内服含めた治療適応を考えます。
      したがいまいして、一度最寄りのクリニックへ健診結果を持参いただき、相談いただくのがベストかと思います!

  • taka より:

    こんばんは
    TAKAより
    宜しくお願いします。
    71歳 男
    LDLコレステロール⇒ 141
    HDLコレステロール⇒ 72
    中性脂肪 ⇒ 57
    血圧 ⇒ 125/75
    血糖値 ⇒ 104
    ヘモグロビン ⇒ 5.8
    頸動脈プラーク ⇒ 左右とも1.6mm
     (2018年 ⇒ 1.4mm)
    喫煙無し
    高血圧、糖尿病無し
    頸動脈を検査した脳外科からコレステロールの薬を勧められました。
    飲むか悩んでます。
    どうしたら良いでしょうか?

    • 湘南いいだハートクリニック 院長 より:

      初めまして!
      “久山町スコア”では、10点となり、10年以内に冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞を発症する確率は13.6%と比較的高いリスクとなっております(あくまで”久山町スコア”での想定値です)。
      “この確率”と頸動脈所見を考慮すれば、脳外科の先生の考えもうなずける点はあります。
      ただし、脂質異常症の治療は、必ずしも薬だけではなく、食事療法・運動療法も重要です。
      例えば、まったく食事療法・運動療法に配慮していなかった方であれば、一度、生活習慣の改変で改善するか効果を見てみましょう、という治療方針も十分ありえます。
      この辺りの治療方針は、患者さんと担当の先生との信頼関係で構築されていくものかと思いますので(少しでも不安や不信のある状態で始まった治療は長続きしません)、薬に抵抗があるようであれば、その想いを担当の先生にとことんぶつけてみるのが良いと思います!

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