花粉症の飲み薬のお勧めは?
こんにちは!
今シーズンは花粉の飛散量が非常に多く、外来でも多くの患者様から「花粉症の薬で良いものはないですか?」と相談を受けます。
わたくし院長も小学生の頃から花粉症に悩まされており、花粉症薬については特に想い入れのある分野でもあります。
そこで今回は、花粉症の薬の選び方について説明したいと思います。
花粉症の飲み薬の比較をイラスト化してみました
花粉症の飲み薬のメインは、H1 blockerという種類のお薬になります。そこで、このH1 blockerのお薬の比較を下にイラスト化してみました。
ポイントは下記の3つです。
ポイント①
上のイラスト図で、上に位置する薬程、効果が強いことを示します。
例えば、ビラノアはクラリチンよりも効果が強いことを示します。
ポイント②
眠気が特に少ないもの(運転できるもの)をピンク色の吹き出しで、眠気が特に強く出るもの(運転できないもの)を紫色の吹き出しで示しました。
ポイント③
各薬の構造によって、グループ A~Cの3グループに分類しました。
この分類の意味合いは後に説明したいと思います。
では、具体的な花粉症の薬の説明を進めたいと思いますが、途中、薬がたくさん出てきて分かりにくくなりましたら、このイラスト図に立ち返ってみてもらえればと思います。
眠くならなくて良く効く花粉症の薬は何ですか?
花粉症の薬を内服するにあたって最も気になる点は眠気だと思います。
花粉症の薬の副作用で眠くなっているのか、花粉症そのものがしんどくて眠くなっているのか良く分からなくなることさえあります。
しかし、実際には眠気・効果の強さ以外にも、即効性や効果の種類、内服の仕方(効果持続時間)や薬価など、その違いは様々ですので、患者さんの花粉症の症状の種類や程度、治療経過などを十分加味して、患者さん毎に最も合う薬を選ぶようにしています。
そのような薬の選択の一助として、直近数年で処方率の高い花粉症の薬をいくつか取り上げ、その特徴を説明したいと思います。
ビラノア
昨今、ビラノアと呼ばれる、その強い効果と眠気の起こりにくさをうりとした薬が登場しました。
ただし空腹時に内服する必要があり(食前1時間前、食後2時間後以降)、食後に内服すると効果が半減するとも言われています。当院では就寝前内服にすることで、この問題点を回避していますが、それでもこの点で内服しにくいと思われる患者さんはおられます。
とはいえ、効果と眠気のバランスが非常に良い薬で、近年は好んで処方されることが多い印象を受けます。
同様に効果の強い花粉症の薬でいうと、冒頭のイラスト図の上の方に位置するルパフィンという薬も人気です。
ルパフィン
ルパフィンは、花粉症の薬の中でもトップクラスの即効性を売りにしています。
さらに鼻づまりに効く抗PAF作用(他のH1 blockerにはない作用)も合わせもつ為、鼻づまりが強い患者さんに処方することが多いです。
ただし、前述のビラノアと比較すると眠気の出やすさが気になる点となります。
これらビラノア・ルパフィンに近い効力を持つ薬として、ザイザルも人気の薬の一つです。
ザイザル
市販薬にもあるジルテック(セチリジン)の改良バージョンで、ジルテックよりも特に眠気の出にくさの点で改良されています。
それでもH1 blockerの中では眠気が出やすい薬の1つに分類されますが、就寝前1日1回の内服で済む為、日常生活への影響をある程度軽減させることができます。
また、ビラノアと異なり食事の影響も受けない為、食生活が不規則な若年の患者さんなどでも内服しやすいというメリットがありますが、即効性や効力においては、ビラノア・ルパフィンよりもやや劣ります。
尚、ザイザルはシロップがありますので、H1 blockerの中でも特にお子さんにも出しやすいという特徴があります。
その他
その他の薬、例えば、イラスト図最上段にあるアレロック(オロパタジン)は優れた効果を有しますが、強い眠気が出る点で使いづらいことが多いです。ただし、顆粒がありますので、お子さんへ処方されることが多いお薬です。
タリオン(ベポタスチンベシル)も比較的効果が強いのでビラノア・ルパフィンが登場するまでは良く処方されていたお薬ですが、薬の効果持続時間が短めの為、1日2回内服が必要な点などで敬遠されることがあります。
市販薬で有名なアレグラ(フェキソフェナジン)は、眠気の起こりにくさでトップクラスですが、その分、効果は弱めです。
尚、1日あたりの薬価については、H1 blockerの中で安価なものは、デザレックス・ルパフィン・ビラノアがトップ3に入ります(いずれも1日1回内服のため)。
このように、同じH1 blockerでもその特徴は様々ですので、当院では患者さん毎にそれぞれの薬のメリットが十分活きる処方に心掛けています。
現在内服している花粉症の薬が効かないのですが、どうしたら良いですか?
現在内服している花粉症の薬の効きが悪いので、もっと強い薬が欲しいというのは、度々受ける相談です。
上で説明したものは、各種文献データに基づく観点で薬を分類したものですが、実際には患者さん毎に合う薬・合わない薬がありますので、それを見つけ出すのもかかりつけ医の役割だと思っています。
そこで、このような質問をいただいた時にどのように次の解決策を見出しているか、こちらもイラストにまとめてみました。
鼻水や鼻づまりが多いならステロイド点鼻薬を併用
H1 blockerで効果が乏しい場合にはステロイド点鼻薬も併用することが、アレルギー性鼻炎のガイドラインに記載されています。
毎年花粉症症状が強い患者さんの場合には、初めから併用することもあります。
ここで市販の点鼻薬はステロイド点鼻薬ではないことが多いのでご注意いただければと思います。(別の記事で説明予定です)
別のグループのH1 blockerに変える
冒頭のイラスト図で、薬の構造によって、グループをA~Cに分類しました。
構造が違えば作用機序が若干異なってきますので、違う効果が期待できます。
したがって、以前の花粉症の薬の効果が乏しかったのであれば、その薬とは違うグループの薬を選ぶというのが一つの解決策となります。
例えば、グループ Aのアレグラが効かなかったのであれば、同じグループAのタリオンやビラノアに変えるよりも、グループ Bのルパフィンやグループ Cのザイザルなどに変更する方がより効果の違いを感じることができる可能性があります。
鼻づまりが強いなら、ロイコトリエン受容体拮抗薬を追加する
鼻づまりが強い場合には、H1 blocker以外のロイコトリエン受容体拮抗薬という薬を併用する選択肢も、アレルギー性鼻炎のガイドラインに記載されています。
具体的にはオノン(プランルカスト)というお薬がよく選ばれます。
1日2回内服ですが、眠気は少なく、上記各H1 blockerと併用できる点が最大のメリットです。
一般のH1 blockerを内服していても全く効かないという患者さんでは、このロイコトリエン受容体拮抗薬の併用で症状が劇的に良くなるケースも度々目にします。
副作用の少なさを優先するなら漢方
薬にあまり頼りたくない、強い薬は飲みたくないという患者様には、漢方をお勧めすることもあります。
花粉症で良く処方される漢方に小青竜湯があります。
思っている以上に効きが良い印象を受けますが、近年のコロナ流行により在庫がない薬局も多いようです。
尚、上記の他に、2019年に重症花粉症の薬として、ゾレアという注射薬が保険適応になりましたが、投与条件が非常に厳しく費用も高額の為、敬遠される傾向にあります。
花粉症の薬は上で説明した通り、実は奥が深いので、花粉症でお悩みの患者様はぜひ一度ご相談下さい!
実経験も踏まえたアドバイスができると思います!
また、アレルギー検査も随時行っておりますので、アレルゲンを特定したい・そもそも花粉症かどうか知りたいなどのご希望がありましたら、お気軽にお声がけ下さい!
コメント
初めてメールをさせてもらうものですが、お忙しい中すみません。
今、ポララミンとビラノアを併用して、飲み始めたのですが、組み合わせが心配なので、ビラノアと併用できるものが、他にあるのかを教えてもらえれば、と思い、この度はメールさせてもらいました。私は30年ぐらいアレルギー性鼻炎に悩まされてきたものです。
よろしくお願い致します。
初めまして!
ご質問ありがとうございます。
ビラノア含むH1 blockerは、”アレルギー性鼻炎に対して”は、同効のH1 blocker同士での併用内服は”原則”避けることになっております。
したがいまして、ビラノアで効果が十分でない場合に”追加する薬”としては、ロイコトリエン受容体拮抗薬(オノンなど)やステロイド点鼻薬が候補に挙がります。
また、アレルゲンによってはアレルゲン免疫療法(減感作療法)という根治療法も存在しますので、一度かかりつけの先生に相談されてみても良いかもしれません!
はじめまして。コメント失礼いたします。
ビラノアとザイザルの併用は問題あるのでしょうか。
お忙しい中恐れ入りますが、ご教授いただきたくお願い致します。
初めまして!
ご質問ありがとうございます。
“アレルギー性鼻炎に対しては”、ビラノアとザイザルの併用、つまり構造の異なるH1 blocker同士の併用は可能ではありますが、眠気や倦怠感などの副作用が出やすくなるリスクを考慮して原則併用は避けます。
したがいまして、抗ヒスタミン薬の併用ではなく、抗ヒスタミン薬の切り替えやロイコトリエン受容体拮抗薬などの追加を行うのが一般的な治療となります。
処方指示以外の内服をされる場合には、かかりつけの先生に相談いただくのが安全かと思います!