心不全ってどんな病気?
こんばんわ!
少しずつ寒くなり始め、心筋梗塞や急性心不全、脳梗塞などが増え始める季節となってきました。
今回はその中でも心臓の病気の代表である心不全について、何回かに分けて説明していきたいと思います。
心不全とは?
心不全とは、「心臓の機能が落ちることで、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり寿命が縮まる状態」のことを言います。
下の図のように、心臓は肺と全身に血液を送り、循環した血液は再び心臓に戻ってきます。しかし、この受け取り皿の心臓が弱ってしまうと、その手前で血液が交通渋滞を起こし、肺や全身に水がたまってしまいます。肺は呼吸をつかさどる臓器ですので、肺に水がたまると呼吸苦が出現しますし、全身に水がたまるとむくみが出現します。
したがって、心不全とは、「心臓の機能が落ちることで、肺や全身に水がたまり、息切れやむくみなどが生じる状態」と言うこともできます。とにかく、「水がたまる」と覚えていただくと良いと思います。
心不全の症状
では、心不全の症状にはどのようなものがあるでしょうか。下に心不全の症状として多いものをまとめましたのでご参照下さい。
① まずは、全身に水がたまる
多くの例では、まず全身に水がたまる症状が出てきます。脚のむくみが良い例で、心不全で生じるむくみは、靴下の跡のように指で押した後に圧痕が残ることが特徴です。
また、体重が徐々に増えてきます。脂肪ではなく水がたまる為です。食べ過ぎなどの心当たりもないのに数週間で2~3kg以上増えてきた場合には注意が必要です。
心臓の病気を抱えている患者様にとって、体重は最大の健康のバロメーターですので、体重は毎日チェックするようにしましょう。
② 次に、肺に水がたまってくる
多くの例では、脚がむくんで体重が増えてきた後に、肺に水がたまることで起こる呼吸困難感を自覚するようになります。「階段を昇った際の息切れ」や「散歩時の息切れ」で相談されることが多いですが、その他の心不全で生じる呼吸困難感の特徴として、起坐呼吸と呼ばれる「横になると息苦しくなるので常に起き上がっていないといられない」という症状があります。また、「夜間に呼吸困難感や咳、寝苦しさ」を自覚されることも特徴です。
さらに進行すると、「動悸」・「脈が速い」・「食欲がない」・「しんどい」・「ふらつく」などの症状も出てきます。
このような症状が出てきたら、心不全の可能性がありますので、必ずかかりつけに相談するようにしましょう。
心臓の機能が落ちる原因
心不全を発症する根本原因である、心臓の機能が落ちる原因は何でしょうか。下に多いものを挙げました。
「高血圧を放置していた」患者さんは、いずれ心不全になりやすいので、できるだけ早くに高血圧の治療を受ける必要があります。また、動脈硬化が進んで心臓の血管が細くなったり詰まったりしてしまうと、その先の心臓の筋肉に栄養が届かなくなり、心臓が弱ってしまう原因になります。つまり、狭心症や心筋梗塞と呼ばれる病気です。また、心臓内の電気回路に異常が生じる不整脈や、心臓の中のドアの開閉のような役割を果たす弁という部分に異常が生じる弁膜症、心臓の筋肉そのものに異常が生じる心筋症や生まれつきの先天性心疾患も、心臓が弱ってしまう原因になりますが、重要なことは、どのような心臓の病気をかかえた患者さんも、最終的に困るのはみな同じ「心不全」であることがほとんどということです。
したがって、心臓の病気をかかえた患者さんは、これまで心不全と言われたことがなくても、今後、心不全を起こすリスクがあるものと考え、心不全について学んでおく必要があります。
心不全患者さんの予後
では、心不全患者さんの予後はどのくらいでしょうか。
よく対比されるのが癌患者さんです。癌患者さんは予後を推定しやすく、「あとどのくらい生きられますか?」と聞けば、ある程度想定できることが多いのですが、心不全患者ではこの予後の想定が困難です。
下に示した図は、「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」に記載されている心不全患者さんの多くが至る人生経過です。横軸は時間経過で、縦軸が「体力」と考えて下さい(「体力」は心肺機能と筋力で多くの場合規定されます)。時間の経過とともに「体力」が弱まっていくことが分かりますが、特に重要なのは赤丸で囲った部分です。
心不全は一度増悪すると、その後も増悪を繰り返すことがほとんどです。赤丸部で囲ったように、初回の急性心不全発症により一度入院加療を受けると少し「体力」は立ち上がりますが入院前の状態までには戻りません。そして退院した後、再度増悪して入院加療を受けると退院時にはさらに「体力」が落ち込んでしまいます。これを繰り返すうちに、徐々に寿命が縮んでいってしまいます。
したがって、再増悪・再入院しないように、ご自身でセルフコントロールすることが非常に重要で、このセルフコントロール力がご自身の寿命を決めていると言っても過言ではないと思います。もしご本人が何らかの理由でセルフコントロールできないようでしたら、ご家族あるいは訪問看護師さんなどがその役割を担ってあげるようにしてあげてください。
セルフコントロールの方法については、別の記事で説明したいと思います。
再増悪・再入院せずに、より健康な寿命を全うできるように一緒に協力していきましょう。