長引く咳の原因 ~マイコプラズマ感染症について~
こんにちは!
運動会のシーズンですね。院長も子供の運動会で久々に日焼けをしました(汗)。
では今回は、コロナ禍の制限が解除されて以降、増加傾向にあり、今年は過去に類をみない程の感染者数を見せているマイコプラズマについて説明したいと思います。
マイコプラズマとは?
マイコプラズマは、下記の点で、一般的な細菌による呼吸器感染症と特徴が異なる為、注意を要する感染症です。
健康的な若い方、特に5~25歳に好発する
特に報告例の約80%が14歳以下ですが、成人でも発症することはあります。
最大の特徴は激しく頑固な咳で、痰は目立たないことが多い
症状は、発熱や頭痛・倦怠感で始まることが多いですが、それよりも熱が下がった後も3~4週間続く咳で悩まされる患者さんが多く、その他の慢性咳嗽をきたす疾患との鑑別が重要です。
また、5~10%では、肺炎に至り、重症化することもあります。
その他に、皮疹・中耳炎・胸膜炎・心筋炎・髄膜炎などの合併症を呈することもあります。
肺炎に至っても聴診所見は乏しいことが多い
血液検査では、細菌感染で見られる白血球の上昇を認めないことが多い
マイコプラズマ感染症は、聴診や血液検査(白血球の値)の所見が乏しい為、症状経過含め、全体像をみて診断・治療へつなげていく必要があります。
感染経路は?
咳やくしゃみによってばい菌が口に入ることで発症する“飛沫感染”と、食事などでばい菌を共有することで発症する“接触感染”があります。
したがって、マイコプラズマが疑われる あるいは診断された方がご家族にいる場合は、手洗いやうがい・マスク着用など感染予防に努めることが必要です。
尚、感染してから発症するまでの潜伏期間は、2~3週間程度です。
検査の方法は?
溶連菌感染症の抗原検査と同様、10~15分程度で結果が出る迅速抗原検査があります。
長い綿棒でのどの奥の方を軽くこするだけの検査で負担はほとんどありません。
当院でも疑わしい患者さんに現在実施可能となっておりますので、マイコプラズマ抗原検査をご希望の患者様はお申し付け下さい。
尚、血液検査によって抗体の上昇を確認する方法もありますが、結果が出るまで時間がかかる為、特別な理由がない限りは実施しておりません。
治療法は?
マイコプラズマ感染症の治療の王道は抗生剤治療です。
治療をしなくても自然治癒することもありますが、重症化予防の為には抗生剤治療がやはり必要不可欠です。
ただし、一般的な細菌感染で用いられるペニシリン系やセフェム系の抗生剤は効かない為、注意が必要です。
逆に、これら抗生剤で全く効果が得られず、頑固な咳嗽が長引いている場合にはマイコプラズマ感染症も疑われます。
マイコプラズマ感染症の第一選択となる治療薬は、マクロライド系抗生物質であるアジスロマイシンです。
その他に、テトラサイクリン系抗生物質(ミノマイシンなど)やニューキノロン系抗生物質(オゼックスなど)も有効ですが、あくまで第二選択の立ち位置となっております。
時々マクロライド系抗生物質に耐性のマイコプラズマがありますので(以前問題となりましたが最近は減っています)、そのような場合には、これら第二選択薬も考慮されます。
尚、市販の風邪薬は根本治療にはなりませんので必ず医療機関で治療を受けることも大切です。
いつまで学校や会社を休む必要がある?
自宅療養期間に決まった定めはありません。
ただし、発症から1週間は、マイコプラズマの排出量が多く、感染力が強い為、感染予防に特に注意する必要があります。
また、排出のピークが過ぎた後も、感染する可能性は十分にある為、症状が改善した後も可能な限り、長期間感染予防に努めることが大切です。
かかりつけの先生とよく相談しながら、登校・出社のタイミングを検討しましょう。
マイコプラズマ感染症は、長引く咳嗽で悩まされることが多い一方で、診断が比較的難しいとも言われている感染症です。
当院でマイコプラズマ感染症が疑われる患者さんでは、現在抗原検査も施行しております。ご希望の患者さんがいらっしゃいましたら、遠慮なくご相談下さい。