右脚ブロックは放置して良いの?
こんにちは!
5月は学校健診の心電図や心雑音で異常を指摘され、相談いただく患者様が多くいらっしゃいました。
そこで今回は、健診の心電図でも偶然見つかることの多い右脚ブロックについて、放置して良いものなのか、説明したいと思います。
尚、当記事を3分40秒程度の動画にまとめてみましたので、もしよろしければ、こちらもご参考にしてみて下さい♪
※ 無音でご視聴可能な動画となっております。
右脚ブロックとは?
心臓の中には、電気が流れており、それによって心臓が一定のリズムで正しく拍動しています。
この電気の流れをさらに詳しくみると、
A) 電気を発する部分 =洞結節
B)変電所 =房室結節
C)右側の電線 =右脚、左側の電線 =左脚
の順に電気が流れていきます。
そして右脚ブロックとは、その名の通り、右側の電線の電気の流れが悪くなっている状態のことを言います。

右脚ブロックの分類
右脚ブロックは、電気の流れの悪さの程度によって、下記の2つに大きく分類されます。
完全右脚ブロック
電気の流れが完全に途絶えている状態のことを言います。
不完全右脚ブロック
電気の流れが少し遅れたり、一部途絶えている状態のことを言います。
「ブロック」という名前が怖い印象を与えますが、実際に右脚ブロックがあっても心臓が止まることはありませんので、その点で心配は不要です。

右脚ブロックの原因
右脚ブロックの原因は、下記の3つに大きく分類されます。
特に、何らかの病気が原因の場合には、それが原因で心臓の右側に負担がかかっていることを示唆します。
病的意義がない
生まれつき右脚ブロックがあるけども病的ではない方もいらっしゃいます。
心臓の病気
心房中隔欠損症や心室中隔欠損症といった先天性心疾患、狭心症や心筋梗塞、心筋症、弁膜症など、あらゆる心臓の病気で右脚ブロックを呈することがあります。
その他の内科の病気
心臓の病気以外に、肺血栓塞栓症、肺気腫などの肺疾患などでは、右脚ブロックを呈することが多くあります。
このうち、病的意義がないことがほとんどですので、基本的に心配する必要はありません。
ただし、時々心臓の病気やその他の内科の病気が隠れていることがありますので、次に説明するようなケースなどによっては、精査が必要な場合がありますので注意が必要です。

右脚ブロックの精査が必要なケース
下記のような例では、右脚ブロックでも一般に精査が必要です。
心雑音を聴取する場合
右脚ブロックの原因として、先天性心疾患、特に心臓の一部に先天的にミリ単位の穴が空いている心房中隔欠損症や心室中隔欠損症などで右脚ブロックを認めます。
したがって、右脚ブロックを認める場合には、必ず慎重な聴診が必須です。
また、心雑音を聴取した場合には、上記鑑別の為に心エコー検査も必須となります。
胸痛や息苦しさ・動悸を自覚することがある場合
右脚ブロックは、あらゆる心臓の病気で生じえますが、特に胸痛や息苦しさ・動悸を自覚することがある患者さんの場合、狭心症や心筋症・肺血栓塞栓症などの鑑別は必須となりますので、当院では心エコー検査を実施しております。
これまで指摘されていなかったのに、初めて右脚ブロックを指摘された場合
新規に右脚ブロックを指摘された場合、その多くは加齢に伴う電線の変性や、高血圧症による心負荷(高血圧性心疾患)が原因のことが多いです。
特に後者の場合には、進行しないように高血圧治療を行う(あるいは強化する)必要がありますので、当院では心エコー検査によって、その鑑別を行います(特に拡張障害の所見がないかどうか)。
また、時々、狭心症や心筋梗塞、心筋症や弁膜症の進行などが隠れていることがありますので、やはり心エコー検査は必須と言えます。
尚、”新規”か不明な場合は、実臨床では原則”新規”と考えて評価するのが安全です。
Brugada症候群を疑う場合
不完全右脚ブロックは、致死性不整脈を引き起こすBrugada症候群と非常に似た波形を取ることがあります。
特に失神歴や突然死の家族歴があるような患者さんでは、必ず一度は循環器専門のクリニックに相談することをお勧め致します。

一般に、右脚ブロックは「大丈夫」と様子見されることが多いですが、場合によっては精査が必要なケースもありますので、
“これまで様子見ましょうと言われていたけど心配”というような患者さんがいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談下さい!

コメント
今年の1月で60歳になった女性です。
今年の8月4日の会社の健康診断で心電図で『完全右脚ブロック』と診断結果が出て
ビックリ。
初めてです。『要経過観察』と書いてありましたが、とても心配になりました。
ちゃんと検査した方がいいのですか?
教えて欲しいです。
初めまして!
ご質問ありがとうございます。
初めて完全右脚ブロックを指摘された場合、その多くは加齢に伴う電線の変性や、高血圧症による心負荷が原因のことが多いのですが、時々心臓の疾患などが隠れていることがあります。
また症状の有無などによっても精査の必要性が変わってきますので、一度最寄りのクリニック(できれば循環器)にご相談いただくのが良いと思います!
心電図検査で「完全右脚ブロック」「強度の右軸変位」と結果が出た、25歳女性です。週2程度、数秒〜数分くらいですが、息苦しさや胸痛が起きることがあります。1度他のクリニックで診ていただいたことがあるのですが「なにか自覚症状ある?ないよね?」と少し食い気味に聞かれ、言い出せずにその場をやり過ごしてしまいました。後になってやはり心配になってきたのですが、もう一度詳しい検査を含めて病院に行った方がよいでしょうか?重度貧血、低血圧、喘息(現在はほとんど症状なし)の既往歴があります。
初めまして!
ご質問ありがとうございます。
「一般的に」、安静時の胸部症状であれば、完全右脚ブロックとの直接の因果関係は乏しいことが多いですが、何事も100%はありませんので、胸部症状があるのであれば、一度循環器内科のクリニックを受診いただくことを推奨致します。
※ 当コメントは、いただいた情報に対する”一般論”としてご回答しております。治療方針等につきましては、”必ず”近医または主治医の指導を仰いでいただきますようお願い致します。
小さい頃から年に1〜2回から数年に1〜2回時々左手側の胸が痛むことがあって病院に行く機会があるたび、健康診断でも聞いてもとくに説明もなくそんな時もあると流されますが今年2月の健康診断で心電図判定Bで不完全右脚ブロックと診断されましたが、確かとくに指示はなかったような記憶には残っていません。
ただ本人としては不安なまま、先ほど改めて調べたらこちらに辿り着いて、胸痛がある場合はと書いてあったので、あれ?と思いコメントしました。
本来今までなんども聞いては反応ないということは、それぞれの知見がその程度との認識ですよね。。
改めて専門で再検査お願いした方が良さそうですね。
初めまして!
ご質問ありがとうございます。
小児期から認めている右脚ブロックの原因としては、稀に先天性心疾患が隠れている可能性があります。
ただし、聴診で心雑音を聴取しない場合や、胸痛が心原性(心疾患由来)の印象に乏しい場合などは、健診などで右脚ブロックを認めても、精査の指示を出さないケースもあります。
精査の必要性については、実際診療の上で患者さんそれぞれで判断すべきですので、一度近医 循環器内科で相談してみるのが良いと思います!
尚、精査は不要と説明された場合は、なぜ不要なのか聞いてみれば安心材料になると思います。
※ 当コメントは、いただいた情報に対する”一般論”としてご回答しております。治療方針等につきましては、”必ず”近医または主治医の指導を仰いでいただきますようお願い致します。
高2の息子のことです。昨年、学校での心電図検査で完全右脚ブロックと診断されました。その後受診した際、日常生活は問題なし、スキューバダイビングだけは禁止、とのことでした。その後も変わりなく過ごしていますが、来月修学旅行があり5日間海外へ行きます。飛行機に乗ることは問題ないのでしょうか。
初めまして!
ご質問ありがとうございます。
完全右脚ブロックを認めるのみなのであれば、「一般的には」飛行機に乗ることは問題ありません。
ただし、完全右脚ブロックの背景に何かしらの心疾患(心臓の病気)が隠れている場合などでは、話が変わってくることがありますので、スキューバダイビングの禁止指示を出された医師に直接問い合わせていただくのが最適と考えます。
※ 当コメントは、いただいた情報に対する”一般論”としてご回答しております。治療方針等につきましては、”必ず”近医または主治医の指導を仰いでいただきますようお願い致します。