右脚ブロックは放置して良いの?
こんにちは!
5月は学校健診の心電図や心雑音で異常を指摘され、相談いただく患者様が多くいらっしゃいました。
そこで今回は、健診の心電図でも偶然見つかることの多い右脚ブロックについて、放置して良いものなのか、説明したいと思います。
右脚ブロックとは?
心臓の中には、電気が流れており、それによって心臓が一定のリズムで正しく拍動しています。
この電気の流れをさらに詳しくみると、
A) 電気を発する部分 =洞結節
B)変電所 =房室結節
C)右側の電線 =右脚、左側の電線 =左脚
の順に電気が流れていきます。
そして右脚ブロックとは、その名の通り、右側の電線の電気の流れが悪くなっている状態のことを言います。
右脚ブロックの分類
右脚ブロックは、電気の流れの悪さの程度によって、下記の2つに大きく分類されます。
完全右脚ブロック
電気の流れが完全に途絶えている状態のことを言います。
不完全右脚ブロック
電気の流れが少し遅れたり、一部途絶えている状態のことを言います。
「ブロック」という名前が怖い印象を与えますが、実際に右脚ブロックがあっても心臓が止まることはありませんので、その点で心配は不要です。
右脚ブロックの原因
右脚ブロックの原因は、下記の3つに大きく分類されます。
何らかの病気が原因の場合には、それが原因で心臓の右側に負担がかかっていることを示唆します。
病的意義がない
生まれつき右脚ブロックがあるけども病的ではない方もいらっしゃいます。
心臓の病気
心房中隔欠損症や心室中隔欠損症といった先天性心疾患、狭心症や心筋梗塞、心筋症、弁膜症など、あらゆる心臓の病気で右脚ブロックを呈することがあります。
その他の内科の病気
心臓の病気以外に、肺血栓塞栓症、肺気腫などの肺疾患などでは、右脚ブロックを呈することが多くあります。
このうち、病的意義がないことがほとんどですので、基本的に心配する必要はありません。
ただし、時々心臓の病気やその他の内科の病気が隠れていることがありますので、次に説明するようなケースなどによっては、精査が必要な場合がありますので注意が必要です。
右脚ブロックの精査が必要なケース
下記のような例では、右脚ブロックでも一般に精査が必要です。
心雑音を聴取する場合
右脚ブロックの原因として、先天性心疾患、特に心臓の一部に先天的にミリ単位の穴が空いている心房中隔欠損症や心室中隔欠損症などで右脚ブロックを認めます。
したがって、右脚ブロックを認める場合には、必ず慎重な聴診が必須です。
また、心雑音を聴取した場合には、上記鑑別の為に心エコー検査も必須となります。
胸痛や息苦しさ・動悸を自覚することがある場合
右脚ブロックは、あらゆる心臓の病気で生じえますが、特に胸痛や息苦しさ・動悸を自覚することがある患者さんの場合、狭心症や心筋症・肺血栓塞栓症などの鑑別は必須となりますので、当院では心エコー検査を実施しております。
これまで指摘されていなかったのに、初めて右脚ブロックを指摘された場合
新規に右脚ブロックを指摘された場合、その多くは加齢に伴う電線の変性や、高血圧症による心負荷(高血圧性心疾患)が原因のことが多いです。
特に後者の場合には、進行しないように高血圧治療を行う(あるいは強化する)必要がありますので、当院では心エコー検査によって、その鑑別を行います。
また、時々、狭心症や心筋梗塞、心筋症や弁膜症の進行などが隠れていることがありますので、やはり心エコー検査は必須と言えます。
Brugada症候群を疑う場合
不完全右脚ブロックは、致死性不整脈を引き起こすBrugada症候群と非常に似た波形を取ることがあります。
特に失神歴や突然死の家族歴があるような患者さんでは、必ず一度は循環器専門のクリニックに相談することをお勧め致します。
一般に、右脚ブロックは「大丈夫」と様子見されることが多いですが、場合によっては精査が必要なケースもありますので、
“これまで指摘されたことがないけど心配”というような患者さんがいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談下さい!