肺炎球菌ワクチンは受けた方が良いの? ~2024年4月からの変更点を踏まえて~
- 2024年3月24日
- 予防接種,3. 肺炎球菌ワクチン
こんにちは!
今月を最後に新型コロナワクチンの全額公費での接種は終了となります。以降、少なくとも65歳未満の方は原則任意接種となる見込みですので(全額自己負担)、接種希望があるが忘れていたという患者様が万が一いらっしゃいましたらお声がけ下さい。
また、はしか(麻疹)が流行しており、麻疹抗体価の採血確認希望の相談が増えております。抗体がしっかり残っているかまずは確認したいという患者様がいらっしゃいましたら一度お声がけ下さい。
では今回は、来月4月1日より肺炎球菌ワクチンの公費助成枠が縮小され、かつ乳幼児の定期接種で推奨される肺炎球菌ワクチンの種類変更に伴い、同変更点含め、肺炎球菌ワクチンについて説明したいと思います。
肺炎球菌とは?
肺炎球菌とは、重症な肺炎を引き起こす原因として最も多い細菌(ばい菌)です。
特にご高齢の方や基礎疾患を有する患者様では、肺炎だけでなく敗血症や髄膜炎を引き起こし、命に関わることも少なくありません。
実際、肺炎球菌による重症肺炎・敗血症で亡くなられた患者様もわたくし自身数名みたことがあり、決して無視できない細菌の一つとなります。
また、小児、特に2歳未満でも発症時に敗血症や髄膜炎を引き起こすことがある為、その予防は非常に重要となります。
肺炎球菌ワクチンを打つのが良いのはどのような人ですか?
上記の点から、肺炎球菌ワクチンの接種が特に推奨されるのは下記の方となります。
ご高齢の方(65歳以上)
年齢が上がる程、感染しやすく重症化しやすくなります。
基礎疾患を有する方
下記のような基礎疾患を有する方でも、感染リスクが高く重症化しやすくなります。
・ 心筋梗塞や心不全など心臓疾患
・ 喘息やCOPD(肺気腫)など呼吸器疾患
・ ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害
乳幼児
免疫がまだ弱く、感染しやすく重症化しやすいとされています。
ワクチンにはどのような種類があるのですか?
肺炎球菌ワクチンには、実は下記の3種類があります。
まずは、分かりやすいようにイラスト図でまとめましたので、同参考に読み進めていただけますと幸いです。
ニューモバックス(PPSV23)
実は、肺炎球菌は90種以上の種類があるのですが、ニューモバックスはそのうち23種類の肺炎球菌に対し効果を持ちます。
この23種類で、成人の重症肺炎を引き起こす肺炎球菌の64%を占めており、成人での予防効果が確立されております。
したがって、成人の定期接種は、ニューモバックスでの接種となります。
プレベナー(PCV20)
プレベナーは、20種類の肺炎球菌に対し効果を持ちます。
免疫が作られにくい乳幼児でも免疫を獲得しやすい工夫がされており、乳幼児の定期接種に用いられます。
一方、65歳以上の成人に対する効果は十分確立していないことから、成人の定期接種の対象とはなっておりません。
ただし、米国ではニューモバックスとの併用も推奨されており、「肺炎には絶対にかかりたくない」という成人の方は、ニューモバックスとプレベナーの両者を接種することも可能ですので、ご相談下さい。
バクニュバンス(PCV15)
バクニュバンスは、15種類の肺炎球菌に対し効果を持ちます。
2022年9月に日本で承認された新しい肺炎球菌ワクチンとなります。
プレベナー同様、成人の定期接種の対象とはなっておりませんが、免疫学的にプレベナーよりも効果が高いとする報告から、「肺炎には絶対にかかりたくない」という成人の方は、ニューモバックスとバクニュバンスの両者を接種することも可能ですので、ご相談下さい。
尚、“小児の肺炎球菌ワクチン”については、2024年4月1日以降、定期接種としてバクニュバンスが承認・推奨されましたが、10月1日以降、プレベナー 20価の承認・推奨へと変更となりました。
これを受け、当院でも厚生労働省の方針にも従い、2024年10月1日以降、”小児の肺炎球菌ワクチン”はプレベナー 20価へ移行しておりますので、ご不明な点は当院へ直接ご相談下さい。
※ それまでバクニュバンスを接種されていた児は、引き続きバクニュバンスでの接種となります。
ワクチンの安全性は?
肺炎球菌ワクチンは、細菌の莢膜という成分で、安全性の高いワクチンであることは分かっております。
副反応として、注射部位の痛みや腫れ、稀に発熱や筋肉痛を認めることがありますが、通常は5日程度で治まります。
公費助成を受けられる年齢は?
それまで、65歳・70歳・75歳・80歳・85歳・90歳・95歳・100歳時に定期接種(公費助成)を受けることが可能でしたが、
2024年4月1日より、下記に該当する方は、定期接種(公費助成)の対象に変更となりました。
65歳の方
接種日に65歳である方のみ対象です(65歳の誕生日の前日~66歳の誕生日の前日)。
基礎疾患を有する60歳以上65歳未満の方
下記のような基礎疾患を有し、かつ身の周りの生活が極度に制限される60歳以上65歳未満の方
・ 心筋梗塞や心不全など心臓疾患
・ 喘息やCOPD(肺気腫)など呼吸器疾患
・ ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害
任意接種を受けたいのですが
公費助成を受けられるのは上記の方ですが、
・ 基礎疾患があるけども、これまで肺炎球菌ワクチンを受けたことがない
・ 65歳以上だけども定期接種のタイミングを逃してしまった方 など
接種をご希望の方は、当院にて接種可能と判断した場合、任意接種(全額自己負担)を受けることが可能です。
都度ご相談いただけますと幸いです。
2回目の接種は必要ですか?
肺炎球菌ワクチンは、初回接種から5~7年経過すると効果が大きく減る(抗体価が下がる)ことが報告されている為、5年後に2回目の接種が推奨されております。
5年後に再接種をすることで、より長期に効果を持続させることが期待できますので、既に初回接種済の患者様も5年以上経過しておりましたら、一度ご相談下さい。
肺炎球菌ワクチンを接種しようか悩まれている患者様は、ぜひ一度当院にご相談下さい!
※ 小児肺炎球菌ワクチンに関しましては、上記の通り、2024年4月より従来のプレベナー 13価からバクニュバンスへ移行となりましたが、10月よりプレベナー 20価が新規に承認され、厚生労働省がプレベナー 20価への移行を推奨していることを受け、当記事を追記修正しております。 2024.10.1 更新