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医療コラム

高血圧の薬は一生飲み続けないといけないの?|湘南いいだハートクリニック|平塚市の一般内科・循環器内科・心臓血管内科

高血圧の薬は一生飲み続けないといけないの?

こんにちは!

高血圧の薬を内服されている患者さんが多くいらっしゃいますが、その中で、度々ご質問いただくのが、“高血圧の薬は一生飲み続けないといけないのですか?”、”一旦飲んだらやめられないと聞いたので飲みたくないです”というものです。

今回は、これらのご質問に対して回答をしたいと思います。

そこでまずは、高血圧の薬をやめる理由を考える前に、高血圧の薬を内服する意義を考えてみたいと思います。

高血圧の薬は治療薬というよりは予防薬と考えるのが良い

 高血圧症の原因の9割は動脈硬化と言われていますが、高血圧の薬はこの動脈硬化そのものを治療する薬ではありません。

 例えば、下の図のように、タミフルなどのインフルエンザのお薬は、インフルエンザウイルスそのものを退治する治療薬ですので、薬の服用によってインフルエンザそのものが治療されます。したがって、インフルエンザそのものが治療された後であれば、インフルエンザのお薬を飲み続ける必要はありません。

 一方で、高血圧の薬は、”血圧を下げて、将来、脳梗塞・心筋梗塞・腎臓病などになるリスクを減らす”ことが主な目的になります。

 高血圧の原因である動脈硬化そのものを治す薬ではありませんので、高血圧の薬を飲むのを中断すれば、再度血圧は上がります。

 したがって、高血圧の薬は、”将来、長生きする為の投資”という考え方もできます。

※ もちろん、高血圧のお薬は、血圧を下げることだけが目的でないものもたくさんあり、また治療薬という意味合いも持ち合わせますが、その辺りの詳細もここでお話するとややこしくなってしまう為、別の機会に説明したいと思います。

高血圧の薬を継続することで、将来脳梗塞・心筋梗塞・腎臓病などになるリスクを減らせているのだと考える

 分かりやすいように下に簡略化した図を載せてみました。

 青色の線は、血圧が高い状態をほっておいた場合の例です。年齢を経る毎に、将来脳梗塞・心筋梗塞・腎臓病などになるリスクが増加していき、ある時に取り返しがつかないこととなります。

 一方で、オレンジ色の線が、途中で高血圧の薬を内服し始めた場合の例です。内服によって血圧が下がれば、そこから将来のリスクの上昇率が減っていき、より長生きできる可能性が増していきます。

 茶色の線は、途中で高血圧の薬を中断したことで、再度血圧が上がってしまった場合の例です。この場合は、内服中断後より再度将来のリスクの上昇率が上がっていき、やはりある時に取り返しのつかないこととなる可能性が増します。

 したがって、将来のリスクを減らす=長生きする為に、血圧が高くならないようにする必要がありますが、その一つの選択肢として”高血圧の薬の内服”があるのだと考えましょう。

高血圧の薬を減量あるいは中止できる方法はある

 では、最初の質問に戻って、”高血圧の薬は一生飲み続けないといけないのか?”という質問に対する回答ですが、上で説明した通り、将来のリスクを減らす為、血圧は高くならないようにする必要があり、その為に薬の力を借りるというのは一つの選択肢です。

 ただし、血圧が上がらないようにする、薬以外の選択肢を見い出せれば、高血圧の薬を減量あるいは中止できる可能性はあります。

 その選択肢として、運動療法(有酸素運動) ② 食事療法(減塩療法)  ③ 禁煙 があります。

 特に、全く運動していなかった患者さんが有酸素運動を毎日するようになると、血圧が10mmHg程度下がることは度々経験します。

 また禁煙することで、血圧が10~20mmHg程度下がる患者さんも時々いらっしゃいます。

 このように生活習慣の改善で血圧を下げることができた場合には、高血圧の薬を減量あるいは中止可能です。

 ただし、現実は加齢に伴う動脈硬化の進行に打ち勝つぐらい、①~③をしっかり実践できる患者さんも多くはなく、高血圧の薬が結局継続になっていることが多いのが現実です(もちろん中止希望があれば、当院ではそういった考えにも寄り添います)。

 

 ポリファーマシーと呼ばれる時代に、当院では可能な限り薬を減らすような努力を行っています。

 薬はもちろん飲まないにこしたことはありませんが、飲まないことで将来のリスクが増え続けていくのであれば、飲んだ方が良い場合もあります(リスク and ベネフィットのバランス)。

 こういった点で悩まれている患者さんがいらっしゃれば、遠慮なく一度ご相談下さい!

コメント

  • TP より:

    血圧の薬ですが、「飲み始めることで、やめられない体になってしまう」ということはありませんか?
    現在の血圧の薬とは、ただ飲めばその分だけその際に血圧が下がり、飲むのをやめるとその分だけ血圧が上がってしまうだけと捉えて良いでしょうか?
    仮に、最初にお聞きした「飲み始めることで、やめられない体になってしまう」のだとしても、そうしないと血圧が下がらない場合は、飲むべきということになるでしょう。
    だからそのこと自体が血圧の薬を否定することにはなりません。
    そのため、血圧の薬に対して否定的な事実であっても構いません。
    あるがままの真実を教えてください。

    • 湘南いいだハートクリニック 院長 より:

      初めまして!
      ご質問ありがとうございます。
      高血圧症など生活習慣病の薬については、この辺りの誤解も多いので、たとえ話をさせていただきます。

      “例えば”、近視で視力が低いとします。
      視力が低くなった原因は、遺伝の要素もあるかもしれませんし、生活習慣の影響もあるかもしれません(パソコン作業や勉強・ゲームなど)。
      では、視力を良くするにはどうするか?
      手っ取り早いのは、眼鏡やコンタクトをつけることです。
      眼鏡やコンタクトをつけることで、少なからず視力は改善します。
      一方で、「眼鏡やコンタクトをつけたことで、眼鏡やコンタクトをやめられない体になってしまうか」と問われれば、何の努力もせずに「眼鏡やコンタクトをやめれば、元の視力に戻るだけ」ということになります。
      もちろん、視力回復・進行予防の方法は、現在少なからずありますので、そういった方法を試みる努力をすれば、いずれ眼鏡やコンタクトから離脱できる可能性もゼロではありませんが、年齢とともに進行する視力の低下は、なかなか改善させることは困難=眼鏡やコンタクトから離脱することは困難であることが多いのが実情かと思います。

      これを血圧の例に置き換えます。
      “例えば”、血圧が高いとします。
      血圧が高くなった原因は、遺伝の要素もあるかもしれませんし、生活習慣の影響もあるかもしれません。
      では、血圧を低くするにはどうするか?
      手っ取り早いのは、降圧剤を内服することです。
      降圧剤を内服すれば、少なからず血圧は下がります。
      一方で、「降圧剤を飲み始めたことで、降圧剤をやめられない体になってしまうか」と問われれば、何の努力もせずに「降圧剤をやめれば、元の血圧に戻るだけ」ということになります。
      もちろん、血圧の改善・上昇予防の方法は、減塩や運動療法など現在多くありますので、そういった方法を試みる努力をすれば、いずれ降圧剤から離脱できるかもしれませんが、年齢とともに進行する血圧の上昇は、なかなか改善させることは困難=降圧剤から離脱することは困難であることが多いのが実情かと思います。

      ただし、食事・運動療法に非常に努力して、降圧剤が不要となり、当院での加療を卒業される方も当院では少なからずいらっしゃるのも事実です。

      上記踏まえた上で、ご質問に下記、ご回答させていただきます。

      ① 「飲み始めることで、やめられない体になってしまう」ということはないか?
      →高血圧の薬に、睡眠剤のような依存性は一般的にありません。「やめられない」というよりも、「(努力せずに)やめれば元に戻るだけ」という認識が正しいかと考えます。

      ② 「現在の血圧の薬とは、ただ飲めばその分だけ血圧が下がり、飲むのをやめればその分だけ血圧が上がってしまうだけと捉えて良いでしょうか。」
      →はい、その通りです。ただし、薬でどの程度下がるかどうかは、患者さん個々で異なります(背景とそれに付随する処方薬によっては全く下がらないケースもあります)。

      眼鏡やコンタクトが、”視力を改善させる”ことだけを念頭にしたものではなく、それによって日常生活のQOL(生活の質)を上げることを目的としていることと同様、
      血圧の薬は、”血圧を下げる”ことだけを念頭にしたものではなく、腎臓や心臓などの臓器保護も目的としているケースも少なくありません(当院ではむしろ後者を重視して薬を選択しております)。

      上記、ご参考にしていただけますと幸いです。

      ※ 当コメントは、いただいた情報に対する”一般論”としてご回答しております。治療方針等につきましては、”必ず”近医または主治医の指導を仰いでいただきますようお願い致します。

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