中性脂肪の治療薬の選び方
こんにちは!
そろそろ9月に入りますが、まだまだ暑いですね。
外来では夏バテ様の倦怠感などのご相談もまだまだ減りません。部屋は涼しく、水分をしっかりとるように心がけましょう!
では今回は、脂質異常症の中でも中性脂肪が高い場合に用いる治療薬の選び方について説明したいと思います。
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中性脂肪の治療薬は、その作用機序から、
A)フィブラート系(ベザトール、リピディル)
B)選択的PPARαモジュレーター(パルモディア)
C)n-3系多価不飽和脂肪酸(エパデール、ロトリガ)
の大きく3つに分類すると分かりやすいです。
そこでこれら3つの大まかな特徴をイラストでまとめてみました。
このイラスト図をもとに、中性脂肪の治療薬について詳しく説明していきたいと思います。
フィブラート系
フィブラート系には、ベザトール(ベザフィブラート)とリピディル(フェノフィブラート)があります。
長年使われてきたお薬ですが、これらお薬による中性脂肪の低下によって心血管イベント(心筋梗塞など)を減らしたというエビデンスは存在しません。
また、”添付文書上”、開始3ヶ月間は毎月、その後は3ヶ月に1回は肝機能の確認が必須となっています。
さらに、悪玉コレステロール治療薬の王道であるスタチンとの併用で横紋筋融解症の頻度を増やす点から、スタチンを既に内服している多くの患者さんで併用しずらいという問題もあり、現在では中性脂肪を下げることを目的とした第一選択薬として選ばれることはあまりありません。
選択的PPARαモジュレーター
パルモディアという比較的新しいお薬になります。
フィブラート系と比較して、スタチンとの併用が可能である点や、腎機能が低下している患者さん(eGFR 30未満)でも減量することで内服可能である点などから、中性脂肪を下げることを目的とした第一選択薬となります。
ただし、やはりパルモディアも心血管イベント(心筋梗塞など)を減らしたというエビデンスは存在せず、まずは生活習慣の改善などが優先されます。
n-3系多価不飽和脂肪酸
n-3系多価不飽和脂肪酸には、エパデール(イコサペント酸エチル)とロトリガ(オメガ-3脂肪酸エチル粒状カプセル)があります。
スタチンへの追加で心血管イベント(心筋梗塞など)を抑制したとの報告があり、動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2022年版でも、魚油の摂取が推奨されています。
中性脂肪を下げる効果はパルモディアに劣る為、中性脂肪を下げることを目的とした第一選択薬とはなりませんが、特に悪玉コレステロールをコントロールできていても心血管イベントが発症したような患者さんでは、積極的に導入を検討することもあります。
デメリットは魚油なので、魚臭いとのことで受け付けない患者さんも時々いらっしゃいます。
中性脂肪に関しては、悪玉コレステロールと異なり、お薬による予後改善のエビデンスは乏しいのが現状ですので、まずは生活習慣の改善を行いつつ、急性膵炎や非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)などの並存疾患も考慮して処方を検討するようにしています。
中性脂肪が高くて悩まれている患者様はぜひ一度ご相談下さい!
※ 当記事は患者さんへの分かりやすさを最大の優先事項としている為、薬の細かな作用機序や例外事項などは一部省略しております。