高尿酸血症の治療薬の選び方
こんにちは!
少しずつ涼しくなってきましたね。
9~10月は運動会で活気があふれる季節ですが、平塚ではインフルエンザが流行真っ只中ですので、手洗い・うがいをしっかりしていきましょう!
では今回は、痛風の原因となる高尿酸血症の治療薬の選び方について説明したいと思います。
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高尿酸血症の治療薬は、その作用機序から、
A)尿酸合成阻害薬
B)尿酸排泄促進薬
の大きく2つに分類すると分かりやすいです。
そこでこれら2つの大まかな特徴を下にまとめてみました。
このイラスト図をもとに、高尿酸血症の治療薬について詳しく説明していきたいと思います。
尿酸合成阻害薬
尿酸合成阻害薬は、尿酸そのものが合成されるのを抑制することで、血中の尿酸値を低下させるお薬です。
尿酸合成阻害薬には、
A)ザイロリック(アロプリノール)
B)フェブリク(フェブキソスタット)
の2つが良く用いられます。
ザイロリックは、長年使用されてきたお薬ですが、腎臓の機能が低下した患者さんでは血中濃度が高くなり副作用が出やすくなる為、減量(調整)が必要となります。
一方、フェブリクは腎臓の機能が低下した患者さん(eGFR 30以上)でも通常の量で内服可能で、さらに尿酸を下げる効果が高く、1日1回の内服で済むという点からも、最近は新規に処方される高尿酸血症治療薬として多い印象を受けます。
特に、腎臓病や心臓の病気をお持ちの患者さんでは、ザイロリックよりもフェブリクが好まれて処方される傾向があります。
また、”添付文書上”は、ザイロリックは、「痛風・高尿酸血症を伴う高血圧症」に適応となる為、高尿酸血症のみの患者さんでは適応外である点に注意が必要となります。
尿酸排泄促進薬
尿酸排泄促進薬は、尿酸が尿中へ排泄されるのを促進させることで、血中の尿酸値を低下させるお薬です。
尿酸排泄促進薬としては、
A)ベネシッド(プロベネシド)
B)ユリノーム(ベンズブロマロン)
C)ユリス(ドチヌラド)
の3つがあります。
ベネシッドは、最も古い高尿酸血症の治療薬ですが、元々ペニシリンの効果を高める為に使われていたお薬で、尿酸低下作用は偶然判明した為、使用されていました。尿酸を下げる効果は十分ではなく、その後のユリノームの登場によって、最近では処方される例はほとんど見かけません。
ユリノームは、長年使用されてきたお薬ですが、重篤な肝毒性が報告されたことで世界的には使用が大幅に制限され使いづらくなりました。実際に肝障害を起こす可能性は非常に低いとの報告もありますが、”添付文書上”も導入後少なくとも半年間は肝機能の慎重なフォローが必要であり、他の高尿酸血症治療薬が使用できない場合に処方される位置づけとなることが多くなっているのが現実です。
一方、ユリスは、2020年に承認された比較的新しいお薬で、ユリノームに比較して肝機能障害をきたすリスクが低いことが期待されています。
ただし、両薬剤とも、尿中の尿酸の濃度が上昇し、尿管結石を発症するリスクが増える為、水分摂取量を増やしたり尿をアルカリ性に保つ努力をする必要があります(野菜や海藻類を食べたり尿アルカリ化薬を併用内服する)。
尚、ユリノームは、ザイロリックと同様、”添付文書上”、「痛風・高尿酸血症を伴う高血圧症」に適応となる為、高尿酸血症のみの患者さんでは適応外となります。
高尿酸血症の治療薬の選び方
高尿酸血症を認めた場合、その原因が何かを考えることから始めます。
その上で、尿酸の産生が過剰な患者さん(産生過剰型)の場合は、尿酸合成阻害薬を選びます。
また、尿酸の排泄が低下している患者さん(排泄低下型)では、尿酸排泄促進薬を選びます。
一般に、排泄低下型の患者さんは60%を占め、メタボリックシンドロームや腎臓病・心不全患者さんの多くが排泄低下型と言われています。
ただし、排泄低下型の患者さんでも尿酸合成阻害薬が有効であったという報告もあり、尿酸排泄促進薬は上で説明した通り、肝毒性などで使いにくかったり尿管結石のリスクがある点などからも、実臨床では排泄低下型の患者さんにも尿酸合成阻害薬が選ばれることが多い印象を受けます。
したがって当院では、病型のみで使い分けするのではなく、患者さんの背景疾患なども加味して、慎重にお薬を選ぶのが良いと考えています。
高尿酸血症の治療薬もその特徴は様々ですが、当院ではなぜ血中の尿酸値が高いのか考えを巡らせながら、患者さんを総合的に診て、最も適した薬を選択するようにしています。
高尿酸血症でお困りの患者様はお気軽にご相談ください!
※ 当記事は患者さんへの分かりやすさを最大の優先事項としている為、薬の細かな作用機序や例外事項などは一部省略しております。