こんにちは！

　健康診断も少しずつ増えてくる時期に入りましたが、健康診断で心雑音を指摘されたというお子さんの相談も増えてきました。

　多くの通院患者さんを聴診していても偶発的に見つかることも多い心雑音ですが、心雑音を聴取した場合に当院ではどのような検査を行っているかについて説明したいと思います。

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　心雑音を聴取した場合、当院では下記の通り精査を進めます。

① 心雑音の種類・大きさを評価し、原因・重症度を想定する。

② 心エコー検査によって原因を探る。

　※ 場合によっては、採血・心電図・胸部レントゲン精査も行います。

　上記精査の結果、経過観察で良いか、さらなる精査が必要かを検討します。

　そこで、①②についてさらに詳しく説明していきたいと思います。

心雑音の種類・大きさを評価

　心雑音とは、正常な心臓の拍動音とは別に聴こえる”ザー”というような雑音のことを言います。

　心雑音には、

A）収縮期雑音　

B）拡張期雑音　

C）連続性雑音　

の大きく3種類があり、雑音の聴こえるタイミングやパターンなどからさらに細かく分類されます。そしてこれらの雑音の特徴から下のイラストの通り、ある程度原因を想定することが可能です。

　さらに、音の大きさはLevine（レバイン）分類という指標で分類することで重症度を評価します。

心エコー検査によって原因を探る

　心雑音の原因には、

A）弁膜症　

B）先天性心疾患　

C）貧血や甲状腺機能亢進症など心臓以外の原因　

D）無害性　

の大きく4つに分類されます。

　そして、弁膜症 及び先天性心疾患があるかどうかは、心エコー検査によって評価を行います。

　まずはいつものようにイラストでその概要をまとめてみましたので参考にしてみて下さい。

弁膜症

　心臓には4つの弁があり、弁が開いたり閉じたりすることで効率よく心臓から全身へ血液を送り出しているのですが、その弁がうまく開いたり閉じたりできなくなる病気を弁膜症と呼びます。

　弁膜症として多いのは、大動脈弁狭窄症・閉鎖不全症、僧帽弁狭窄症・閉鎖不全症、三尖弁閉鎖不全症、肺動脈弁閉鎖不全症です。

　特に、ご高齢の患者さんの心雑音の原因として多いのは大動脈弁狭窄症です。加齢や動脈硬化により進行することも多い弁膜症で、重度になると失神や突然死の原因にもなりますので、見つかった場合には治療方針について慎重に評価する必要があります。

　また、高血圧が遷延していたり、心房細動などの頻脈性不整脈をもつ患者さんや、心臓の機能が低下している患者さんなどでは、僧帽弁閉鎖不全症や三尖弁閉鎖不全症といった所謂 “逆流症”と呼ばれる弁膜症も多く認めます。

　いずれも心エコーによって弁の開き具合や血流の向きなどを見て評価を行うことが可能です。

先天性心疾患

　先天性心疾患とは生まれつき存在する心臓の構造の異常で、異常のパターンにより数多くの疾患に分類されますが、その中でも多いのは心臓の中に小さな穴が開いている心房中隔欠損症や心室中隔欠損症です。

　心房中隔欠損症は大人になってから見つかる先天性心疾患で最多です。

　心室中隔欠損症は先天性心疾患の中では最多で穴が自然閉鎖する場合も多いです。

　いずれも心エコーによって通常は存在しない穴や血流の向きなどを見て評価を行うことが可能です。

　お子さんで心雑音を指摘された場合、その多くは後に説明する無害性のことが多いですが、稀にこれら先天性心疾患が隠れていることがありますので、心エコーでの精査は原則必須と言えます。

貧血や甲状腺機能亢進症など心臓以外の原因

　心臓に異常がないのに心雑音が聴こえる原因として、貧血や甲状腺機能亢進症・発熱・運動・妊娠などが挙げられます。

　貧血があったり発熱時、運動時などは心臓が頑張ろうと拍動を強くする為、大動脈弁や肺動脈弁の開きが悪くなり、弁膜症の時と同じような心雑音を聴取することがあります。

　したがって、心臓に異常がない場合は採血にて貧血や甲状腺ホルモンを確認することもあります。

 

無害性

　全く病的なものはないのに心雑音を聴取する場合、”無害性雑音”と言います。

　お子さんでは、胸壁が薄い為に心臓に全く異常がないのに心雑音を聴取することも多いですので、心雑音を指摘しても過度に心配する必要はありません。

　ただし、上記先天性心疾患などが隠れている可能性もゼロではありませんので、当院ではお子さんで心雑音を指摘・聴取された場合にも、原則心エコー検査を実施しております。

　その他にも、閉塞性肥大型心筋症と呼ばれる心臓の筋肉が分厚くなることで心雑音を聴取する心筋症や、心臓の周りの膜に炎症が起こることで息を吸った時に心雑音（心膜摩擦音）を聴取する心膜炎などもありますが、当院ではあらゆる可能性を考え心エコーでの評価を行っております。

 

　上で説明した通り、心雑音の原因は子供と大人で大きく異なります。

　子供の心雑音はその多くが異常がないものですが、まれに心臓の病気が隠れていることもあります。

　したがって、心雑音を指摘された場合には当院では原則心エコー検査による評価を行っておりますので、一度ご相談下さい！