心不全マーカーと呼ばれるBNPは、いくつ以上の場合に精査した方が良いの?
こんにちは!
大分暑くなっており、熱中症で来院される患者さんが昨年よりも早めに増えてきております。
特に明日からは、平塚市の一大イベント “七夕祭り”も始まりますので、水分をこまめにしっかりとって、七夕祭りを楽しみましょう!
では今回は、最近テレビでも時々取り上げられ、診察時にもご質問を受けることのある、”BNP”について説明したいと思います。
尚、当記事を4分40秒程度の動画にまとめてみましたので、もしよろしければ、こちらもご参考にしてみて下さい♪
※ 無音でご視聴可能な動画となっております。
BNPとは
BNPとは、所謂”心臓ホルモン”の1つで、“心臓にかかる負担の程度”を示す指標と言えます。
心不全などによって心臓に負担がかかると、proBNPというホルモンが急速に増え、このproBNPは、NT-proBNPとBNPに分解され血中に出現します。
したがって、“心臓にかかる負担の程度”が高い程、NT-proBNPやBNPという数値が上昇します。
心不全の予後予測能力(癌で言うところの余命)は、NT-proBNPもBNPも同程度とされており、最近では早期の心不全を検出するマーカー(癌マーカーのようなもの)として、再度注目を浴びています。

NT-proBNPとBNPの基準値は?
2023年「血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント」が発表されたことを受け、2025年4月「心不全診療ガイドライン」改定版にその旨が反映されました。
そこでは、NT-proBNP及びBNP値について、循環器専門医への紹介=精査を推奨する基準値が変更(引き下げ)となりました。
具体的には、下記の通り変更となっております。
① NT-proBNPは、400 pg/mL以上から、125 pg/mL以上に変更(引き下げ)
② BNPは、100 pg/mL以上から、35 pg/mL以上に変更(引き下げ)
さらに、心不全管理において、
① NT-proBNPが、前回測定値の30%以上上昇
② BNPが、前回測定値の40%以上上昇
している場合にも、その原因を精査し早期介入すべきと新規に記載されました。

NT-proBNPやBNPが高いと”具体的に”何が疑われるの?
NT-proBNPやBNPは、前述の通り、心不全を早期に見つける為の心不全マーカーとして位置づけられています。
ただし、心不全ってどんな病気?の記事でも説明の通り、心不全は病名ではなく、「心臓の機能が落ちることで、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり寿命が縮まる状態」のことを言います。
つまり、心不全の兆候があるということは、「心臓の機能が落ちる何かしらの心臓の病気」が隠れているということになりますので、それが何かを調べることが重要です。
その代表として、狭心症・心筋症・弁膜症・先天性心疾患などが挙げられます。
特に、昨今、HFpEFと呼ばれる、高血圧症などを原因として、“心臓が収縮するパワー(EF)”は正常なのに、“心臓が拡張するパワー(膨らむ力)”が低下する病態(拡張障害)が注目を浴びており、心不全患者さん全体の半分以上がHFpEFとも示唆されております。
今回のNT-proBNP・BNP値の紹介基準の改訂は、これらを早期に見つけ、将来の心不全予防を行うことを主な目的とした変更点とも言えます。
例えば、今まで心臓の病気を指摘されたことがないけれども、生活習慣病で加療中のリスクの高い患者さんは、時々NT-proBNPやBNPを測定し、値が上記を満たしていれば、心エコーを含めた精査をすることが推奨されます。
HFpEFは、EF(収縮力)や心肥大所見などの見た目で分かる所見だけでなく、昨今注目されている一見見た目では分からない“拡張能力”の評価も重要であり、こうした初期の変化を心エコーでとらえる為に、一度は循環器専門医の受診を推奨致します。
尚、NT-proBNPやBNPは、性別・腎機能・肥満の有無・肺疾患の有無など、心疾患以外の要因でも変動しますので、その評価は値そのもの以上に前回からの変化の方が重要となる場合が実臨床では少なくありません。

NT-proBNPとBNPはどちらが良い指標?
病院やクリニックによって、BNPで評価する施設と、NT-proBNPで評価する施設に分かれますので、両者の違いについて説明したいと思います。
運用面
NT-proBNPは、生化学の採血管(一般的な採血項目の採血管)と同じ採血管で測定可能ですが、BNPは特殊な別の採血管を必要とする為、患者さん側から見ると必然的にBNPは採血量が多少多くなります。また、BNPは温度の影響や溶血の影響を受けやすい為、測定結果の信頼性が相対的に低くなり、運用面でもやや不便となります。
早期診断
NT-proBNPは、BNPよりも心不全の”早期”診断に有利と言われています。
※ NT-proBNPは、BNPに比べ、代謝による消失が少ない為。
ARNIの効果判定
心不全の重要治療薬であるARNI(エンレスト)は、導入開始早期は、BNPがむしろ上昇することが多い為、BNPはARNIの早期の効果判定(ARNIが効いたかどうかの評価=効けば本来は下がるはず)には用いることができません。
※ ARNIは、BNPの分解を抑制する作用を持ち合わせる為、導入早期は、BNPがむしろ上昇します。
※ ARNIについては、心不全の4大治療薬とは?でも解説していますので、ご参照下さい。
腎機能の影響
前術の通り、NT-proBNPは、BNPよりも腎機能の影響を受けて変動しやすいと言われています。
つまり、腎機能が悪化すると、それだけでNT-proBNPの方が上昇しやすくなります。
※ NT-proBNPはeGFR 90未満から、BNPはeGFR 60未満から影響を受けるという報告もあります。
この点は、昨今注目を集める「心腎連関(心疾患を心臓の視点だけでなく腎臓の視点からもみて治療を行う考え方)」の観点からは、NT-proBNPの方が心臓だけでなく腎臓も含めた視点で重症度を捉えやすい(心腎機能の総合的バイオマーカー)のですが、実臨床では、値が上昇した場合に、心臓主体の要因か腎臓主体の要因か使い慣れていないと評価が一見難しくなることがあります。
予後予測能力
最も重要な心不全患者さんの予後予測能力は、NT-proBNPもBNPも同程度とされています。
日本では、腎機能の影響などの点から、伝統的にBNPが優先的に使われてきた経緯がありますが、今後は、ARNI(エンレスト)の登場により、NT-proBNPが主流になってくる可能性が高いと思われます。
実際、昨今の心不全の研究・論文は、NT-proBNPを指標として用いているものが多く、国際的にはNT-proBNPがより普及してきている印象があります。
当院では、心保護目的にARNIを導入・調整する患者さんも少なくなく、その効果判定含めた心不全の血行動態評価目的にNT-proBNPを原則用いております。
※ ただし現状は、予後予測能力の点で両者に有意差はなく、どちらを評価指標として用いても全く問題ないものと考えられます。

NT-proBNPやBNPが高いと言われたことがあり、様子見ましょうと言われたが気になっています、などの患者さんがいらっしゃいましたら、一度ぜひ当院にご相談下さい!
※ 尚、当院ではNT-proBNPやBNP値が高い場合に、その値だけでなく、患者さんの背景因子(年齢・性別・肥満の有無・腎機能・肺疾患の有無等)や症状、これまでの推移等も加味した上で、精査の必要性・方向性を検討しております。

コメント
BNPの数値が3年前68,2年前110、現在129という推移ですが、カテーテル・アブレーションしたほうが良いのでしょうか。88歳の男性高齢者で不整脈といわれています。小走りしたり、長い階段を上ると息切れ,動悸があります。
初めまして!
ご質問ありがとうございます。
現在わかっている範囲で下記4点の情報がありますと、ご助言可能な点があるかもしれません(おそらく主治医は把握されていると思います)。
① カテーテル・アブレーションを検討されている不整脈は何でしょうか?(不整脈にもいくつも種類があります)
② ①の不整脈の原因(心疾患含)は何でしょうか?
③ BNPが上昇傾向にある原因は何と説明されているでしょうか?
④ 息切れ・動悸の原因は何と説明されているでしょうか?
診察であれば直接患者様と対話する中で上記見えてきますが、文書でのやり取り上では現状全く上記が見えてきませんので、ご理解いただけますと幸いです。
今日定期検査でNTproBNPの数値が215.2になりました。検査結果は今回初めてのことです、10年以上検査して初めてのことです。何がいけないのでしょうか。お教えください。
初めまして!
ご質問ありがとうございます。
バックグラウンドの情報が少なすぎるので、いただいた情報のみで判断するのが困難です。
ただし、NT-proBNP値が高い場合には、まずは心疾患の可能性から検討するのが「一般的」ですので、一度循環器内科のクリニックで相談していただくのがベストと考えます。
※ 当コメントは、いただいた情報に対する”一般論”としてご回答しております。治療方針等につきましては、”必ず”近医または主治医の指導を仰いでいただきますようお願い致します。
はじめまして質問させて下さい。
私は52歳女性で右胸心です。
今年10月、安静時に30分ほど続く胸の痛みを経験し受診。
不整脈があると言われ心エコー、心電図、をとり共に異常なし、若干脈は速いと指摘されました。
その後薬(ビソプロロール2.5mg)で、痛み不快感はなくなり安心していましたが、11月位から日により胸の痛み(普通に動けるていど)胸の不快感が出ています。
BNPは46.2でした。次回はまた心電図をとる予定です。この不快な胸の感覚と痛みはこのまんま抱えながら生活しなければならないのでしょうか?
更年期のせいなのかここ10年くらいは熟睡できず、あまり眠れなかった日は痛みがある気がしてます。
動悸や息切れなどはありません。関係あるか分かりませんが、今年コロナに罹ってから耳鳴りが常にあります。
次回が来月の受診の為、不安になりご質問しました、よろしくお願いいたします。
初めまして!
ご質問ありがとうございます。
重要な点は、「胸の痛みの原因は何か?」ですが、主治医は精査の結果、その原因を何と説明されているのでしょうか?
また、ビソプロロールが処方されたのは、何に対して処方されたのでしょうか?(経過から推測するに洞性頻脈でしょうか)
何事も原因が分からないと治療が進んでいきません。
もし上記不明なのであれば、再度主治医にご相談いただいて、主治医の治療方針の考えを共有することが、前向きな治療の第一歩につながるのではないかと考えます。
※ 当コメントは、いただいた情報に対する”一般論”としてご回答しております。治療方針等につきましては、”必ず”近医または主治医の指導を仰いでいただきますようお願い致します。
ご返信ありがとうございます。
お薬は不整脈に対してのものでした。
その後しばらくは痛みもなく診察においても不整脈はないと言われ安心していた所に、またジワジワと痛む時があり、それが気になっています。
前回は原因はこれ、という事は明言されてませんでした。
先生のおっしゃるように次回は不安に思っていることをきちんと聞いてこようと思います。
ありがとうございました。
ご返信ありがとうございます。
不整脈にもいろいろ種類がありますので、主治医にもう少しご自身の病態について聞いてみていただくと、ご助言できる範囲が増えてくると思います。
良い方向に向かうよう祈っております。
色々調べておりまして、こちらにたどり着きました。
現在、30代です。
期外収縮かも?と10年程前に診断を受けたことがありますが、症状自体は中学生頃から自覚がありました。
心臓がたまに跳ねる(ドクっとなる感覚)は、継続時間は短く一瞬だったり数回続いて収まったりでした。
最近、15分程続いたこともあり診察へ行ったところ、BNPが109と出ておりました。
いますぐどうこうなるものではない、と診断を受けておりますが、24時間のホルターを後日装着することになっています。
お酒やタバコ、カフェイン等は控えるように、ということなのですが、中学生の頃からなのでそれが原因とも思えずです。
やはり、装着している際にデータが取れないことには何が原因か、というのは分からないものなのでしょうか。。
治療方針も立てられずと思うと不安で仕方ありません。
何とか治る方向にしたいのですが、やはり難しいのでしょうか。
ご質問ありがとうございます。
症状の原因が不整脈なのかどうかは、一般的には症状がある時の心電図を見る必要があります。
仮にホルター装着日に症状がたまたま出なかったのであれば、現在は「心電計」というものが通販で売っておりますので、高額ですが症状の程度によっては、購入を検討してみても良いかもしれません(症状がある時の心電図をご自身で記録することが可能です、その他にもApple Watchの心電図Appというものでも記録可能です)。
ご参考にしてみて下さい。
※ 当コメントは、いただいた情報に対する”一般論”としてご回答しております。治療方針等につきましては、”必ず”近医または主治医の指導を仰いでいただきますようお願い致します。