長引く咳の原因 ~百日咳について~
こんにちは!
大分温かくなってきましたね!
インフルエンザやコロナもまだ陽性になる患者様が少なからずいらっしゃいますが、当院発熱外来で3月より始めました「Biofire Spotfire」では、ヒトメタニューモウイルスやライノウイルスなどの陽性例もあります。
そのような中で、最近流行しテレビでも度々取り上げられている百日咳について、今回は説明したいと思います。
百日咳とは?
百日咳は、痙攣性の特徴的な咳発作で有名な細菌感染症です。
病名の通り、咳が長く続くことが特徴です。
最近は大人の患者数も増加
以前は子供の病と呼ばれ、特にワクチン未接種の乳幼児で重篤化する傾向がありました。
しかし、最近はワクチンを接種していない大人の方や、接種していても免疫が弱くなっている大人の方でも発症する例が多く報告されています。
特徴的な咳が長く続く
症状の経過は、① カタル期 ② 頸咳期 ③ 回復期 の大きく3段階に分類されます。
カタル期:1~2週間
微熱・鼻水・咳などの軽い風邪症状が1~2週間継続します。
また、次第に咳の回数が増えて、激しくなっていきます。
頸咳期:2~3週間
次第に特徴的な痙攣性の咳発作を認めるようになります。
顔を真っ赤にして”コンコン”と5~10回せき込む発作(スタッカート)の後に、息を吸うときに”ヒュー”っという笛が鳴るような音(whoop)が聞こえます。
この痙攣性の咳発作を数回~数十回繰り返すことをレプリーゼと呼び、百日咳の咳の特徴として有名です。
夜間に特に症状が悪化し、嘔吐を伴うこともあります。
回復期:2~3週間
咳発作が徐々に軽減していきますが、忘れたころに特徴的な咳発作が出ることもあります。
乳児では重症化し、肺炎や脳症を合併することもあります。
一方で、成人では典型的な咳発作は呈さず、咳が3週間以上の長期にわたって遷延した後に自然に回復していくこともあります。
感染経路は?
咳やくしゃみによってばい菌が口に入ることで発症する“飛沫感染”と、食事などでばい菌を共有することで発症する“接触感染”があります。
したがって、百日咳が疑われる あるいは診断された方がご家族にいる場合は、手洗いやうがい・マスク着用など感染予防に努めることが必要です。
尚、感染してから発症するまでの潜伏期間は、5~10日程度(最大 3週間)と長めです。
検査の方法は?
診断の為の検査法として、PCR法・抗体検査(採血)・培養検査のいずれかがあります。
当院では、「Biofire Spotfire」によるPCR法により、高感度に百日咳を検出することが可能です。
長い綿棒でのどの奥の方を軽くこするだけの検査で負担はほとんどなく、20分程度で結果を得ることができます。
また、百日咳と比較的症状が似ているマイコプラズマ感染症も同時に検査できることもメリットの1つです。
尚、抗体検査(採血)・培養検査は、結果を得るまでに時間がかかる点などから、特別な理由がない限りは実施しておりません。
治療法は?
百日咳の治療の王道は抗生剤治療です。
発症から2週間以内の早期の投与で、症状の重症化や感染期間の短縮を期待できます。
一方で、特徴的な咳が認められるようになってからの時期(発症から2週間以降)では、抗生剤による症状の改善効果は乏しいですが、重症化予防・二次感染予防の為には抗生剤治療がやはり必要不可欠です。
百日咳の第一選択となる治療薬は、マクロライド系抗生物質であるクラリスロマイシンなどです。
いつまで学校や会社を休む必要がある?
園児・児童・学生は特有の咳が消失するまで、あるいは抗生剤による5日間の治療が終わるまでは、出席停止となっています。
成人の場合も、咳が出ている間は、感染力がある可能性がある為、感染予防に特に注意する必要があります。
また、乳幼児が感染すると重症化する可能性が高い為、小さなお子さんと接触する機会のある職場やご家庭では、特に感染させないように十分に配慮する必要もあります。
かかりつけの先生とよく相談しながら、登校・出社のタイミングを検討しましょう。
百日咳は、長引く咳嗽で悩まされることが多い感染症の一つです。
当院で百日咳が疑われる患者さんでは、現在PCR検査も施行しております。ご希望の患者さんがいらっしゃいましたら、遠慮なくご相談下さい。