冠攣縮性狭心症、及び微小血管狭心症の治療薬とは?
- 2025年5月1日
- 循環器内科,5. 狭心症・心筋梗塞
こんにちは!
運動にはちょうど良い季節になってきましたね!
院長が趣味で育てているクワガタも、ようやく冬眠から目覚め、活発に動く姿を見て癒されています。
では、今回は、安静時の胸痛は冠攣縮性狭心症や微小血管狭心症かもしれないの記事で、冠攣縮性狭心症 及び微小血管狭心症について、病態から原因、診断法まで説明しましたが、ここでは具体的な治療薬について説明したいと思います。
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冠攣縮性狭心症については、治療薬が比較的確立しておりますが、微小血管狭心症については、まだ機序そのものが不明な点も多く、治療法が十分確立しておりません。
しかし、先の記事でも説明の通り、日本人の場合、微小血管狭心症も冠攣縮性狭心症と同様に血管攣縮の関与も多いと示唆されており、実臨床では、冠攣縮性狭心症に準じて治療を行うことが多くなります。
また、発作の頻度が多かったり、程度が強い場合には、心筋梗塞へ移行する場合も皆無ではなく、治療薬について患者さん毎に適切なものを選択していくことは非常に重要です。
そこで下記に、両狭心症によく用いられる治療薬を簡単にイラストでまとめましたので、まずはこちらを参考にしていただきながら、読み進めていただけますと幸いです。
Ca blocker
冠攣縮性狭心症では、第一選択として用いられることの多い効果の確立した薬です。
実臨床では、強く疑われる場合に、診断的治療目的に開始されることもあります。
Ca blockerは高血圧症にも多く用いられる薬ですが、なかでもヘルベッサー(ジルチアゼム)・コニール(ベニジピン)・アダラート(ニフェジピン)が、両狭心症の治療薬として用いられます。
ヘルベッサー・コニールはアダラートより狭心症発作予防の効果は弱めですが、降圧作用が低めという特徴があり、普段の血圧などをみていずれの薬を選択するか決めております。
また、既に高血圧症でお薬を内服中の患者さんでは、高血圧の薬そのものをこれらに変更して、降圧と狭心症予防の両者の効果を兼ね備えるという治療法の選択肢もあります。
尚、微小血管狭心症では、Ca blockerが効きにくいこともある為、次に説明する別のタイプの狭心症薬を検討することも少なくありません。
Kチャネル開口薬
心臓の血管を拡張させる薬です。
Ca blockerとは作用機序が異なる為、Ca blockerでも効果が乏しい場合に用いることが多い印象です。
また、Ca blockerと比較して、血圧や心拍数に影響を与えることが少ない為、普段から血圧や脈拍数が低い方にも使いやすいという特徴があります。
一方で、他の狭心症薬と比較して、頭痛を引き起こしやすく、使えない場合も少なくありません。
臨床的には、ニコランジル(シグマート)が用いられます。
硝酸薬
ニトロと同様のタイプの薬で、ニトロが良く効く場合に追加導入することがあります。
ただし、長期に使うと耐性がつきやすい(効きにくくなる)などの理由で、第一選択とはなっておりません。
具体的には、アイトロールやフランドルテープ(貼付剤)などがあります。
長期間の使用が見込まれる場合には、耐性を考慮し、症状の強い時間帯に合わせて内服や貼付をするよう配慮することが多いです。
脂質異常症薬
動脈硬化が進行していると発作が起きやすいという報告もあり、高コレステロール血症に対して用いられるスタチンというタイプの薬や、中性脂肪の治療薬であるエパデール(イコサペント酸エチル)が、発作予防に効くとする報告もあります。
漢方
上記狭心症に効いたと症例報告されている漢方がいくつかあり、上記治療薬が効きにくい場合や患者さんがご希望される場合などに導入しております。
冠攣縮性狭心症も微小血管狭心症も、上記治療薬が奏功する場合が多くあります。
また、治療薬が効きにくい場合は、根本原因となっているストレスや喫煙など、別の観点からのアプローチが奏功する場合もあります。
当院では多角的な視点で治療を行っておりますので、上記狭心症の治療薬でお悩みの方がいらっしゃいましたら、一度ご相談下さい!